破産開始決定を受けた「松乃湯」のビル＝高岡市末広町

　高岡市中心市街地の末広町で70年余りにわたり親しまれてきた老舗公衆浴場「松乃湯」が、富山地裁高岡支部から破産手続き開始決定を受けたことが24日、分かった。東京商工リサーチ、帝国データバンクの両富山支店によると、郊外型スーパー銭湯との競合で厳しい経営が続き、能登半島地震で被害を受けた建物の修繕も必要となったため、事業継続を断念したとみられる。 　両支店によると、松乃湯は1952（昭和27）年に設立された公衆浴場業者で、66年には5階建てビルを新築した。高岡駅や繁華街から近く、にぎわっていた時代もあったが、施設の老朽化などで利用客は減少していた。 　代表者だった松野幸吉氏と、取締役の息子が相次いで亡くなり、代表者の妻が事業を継承したが昨年に事業停止していた。負債は帝国データバンクが約5200万円、東京商工リサーチは5284万円とみている。 　富山県内での能登半島地震関連の倒産は、新湊商業開発（射水市）に続き2件目となる。 　　●住民「寂しい」 　浴場の向かいに住む90代の女性は70年前に嫁いできた時は自宅に風呂がなく、毎日のように通ったと言い、「昔は風呂のない家が多く、みんな利用していた。なくなるのは仕方ないが寂しい」と語った。 　ビルは老朽化が激しく外壁の一部が剥がれており、70代の男性は「いつ倒れてもおかしくないような状況で危ない」と話した。