「業界最小」の消費電力、ルネサスのローエンドマイコン「RA0」第1弾
ルネサス エレクトロニクスはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2024」(2024年4月9~11日)において、「業界最小クラス」(同社)の消費電力を実現したというローエンドマイコン「RA0」シリーズの第1弾製品である「RA0E1」グループを出展し、その詳細を紹介した。 既存品とRA0E1の比較。「コスト重視のアプリケーションに対応するため、ペリフェラルを非常に最適化して設計した」としている[クリックで拡大]出所:ルネサス エレクトロニクス
ルネサスの110nmプロセス採用で低消費電力を実現
ルネサスはArmコアマイコン製品として「RAファミリー」を展開している。RAファミリーにはこれまでRA2、RA4、RA6、RA8シリーズがあり、最もローエンドなのはRA2シリーズだったが、今回、さらなるローエンドニーズに対応するため「RA0」シリーズを新たに開発したという。 今回発表したRA0E1は動作周波数32MHzのCortex-M23コアを搭載、「コスト重視のアプリケーションに対応するため、ペリフェラルを非常に最適化して設計した」(説明担当者)という製品だ。各種センサーや小型家電などをはじめ、幅広い分野における低コストを重視するアプリケーションをターゲットとしている。 同社がRA0E1の大きな特長として挙げるのが、「業界最小クラス」(同社)の低消費電力で、具体的にはアクティブモードで84.3μA/MHz、スリープモードで0.82mA、ソフトウェアスタンバイモードで0.2μAという低消費電流を実現しているという。同社の説明担当者は「われわれは、ローエンドマイコンで顧客が何を好むか、市場のニーズを調査した。その結果、低消費電力/低リークのプロセスが重要であることが分かった」と説明。RA0E1はルネサスの低消費電力を実現する110nmプロセス技術を採用しているといい、「同プロセスによって競合よりも低い消費電力性能を実現できた」と語っていた。
スタンバイモードからの復帰時間は競合比で約7分の1
ソフトウェアスタンバイからのウェイクアップ時間が早い点も特長だ。高速オンチップオシレーター(HOCO)を用いることでウェイクアップ時間は1.6マイクロ秒と、競合比7分の1ほど時間で復帰可能だという。説明担当者は「ローエンドで低コストのアプリケーション、例えばガラス破壊や煙探知機のようなアプリケーションではスタンバイモードでの高速ウェイクアップは非常に重要になる。ここからもコスト重視のアプリケーションに適合するようにデバイスを最適化していると分かるだろう」と語っていた。 この他、動作電圧が1.6~5.5Vと広いことから、5Vシステムでのレベルシフターやレギュレーターが不要なほか、シリアル通信、アナログ機能、安全機能、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)機能も搭載している。 内蔵のHOCOは±1.0%と高精度で、「外部オシレーターを使用せずに通信のボーレート精度を維持可能となることから、さらなるBOM(部品表)コストの低減と実装面積の低減を図ることが可能」と説明。また、-40~+105℃の環境下でも±1.0%の精度を維持できるため、リフロー工程後でも精度が保証され、それに伴い時間のかかる「トリミング(精度調整)」の工程を省くことも可能になるとしている。 RA0E1は、動作の異常を診断できる安全機能として、IEC60730に準拠した自己診断ライブラリーも用意。セキュリティ面でも、真性乱数発生器(TRNG)やAES暗号化ライブラリーに対応している。パッケージは、3×3mmの16ピンQFNから7×7mmの32ピンQFPまでさまざまなラインアップを用意し、すでに量産を開始している。