工事渋滞中、トラックに車挟まれ一人息子は死んだ 帰ってくるはずが…「痛かっただろう」父は泣いた 中央道事故1ヵ月
亡くなったのは、長野県安曇野市出身の大学4年生
長野県茅野市宮川の中央道下り線で2023年11月30日深夜に発生し、安曇野市出身の大学4年生、花村優太さん(22)が亡くなった多重事故から1カ月の節目を前に、父(63)と母(62)が取材に応じた。優太さんは農協への就職も決まっており、東京都多摩市のアパートを引き払って実家に帰る途中だったといい、両親はかけがえのない一人息子を突然に失った悲しみに打ちひしがれている。 【写真】事故で亡くなった花村優太さん
多重事故に巻き込まれ「優太さんが意識不明」警察から突然の電話
12月1日未明、両親はいつも通り、日付が変わってから安曇野インターを降りる優太さんを待っていた。すると自宅の電話が鳴った。「優太さんが意識不明の状態で病院に運ばれました」。長野県警からだった。急いで諏訪市内の病院に車を走らせた。 午前2時前、対面した優太さんの体は既に冷たくなっていた。歯は折れ、胸には何かとぶつかった痕があった。「これは夢なんじゃないか」。医師の説明を聞いても理解できず、頭が真っ白になった。死因は心破裂だった。
県警高速隊などによると、事故は11月30日午後10時40分ごろ、諏訪インターから東京方面に1・6キロの地点で起きた。茨城県古河市の男性の大型トラックが、渋滞の最後尾でハザードを点灯させて止まっていた優太さんの乗用車に衝突。前方の中型トラックや乗用車を巻き込んで計5台の多重事故となった。 渋滞は諏訪インターを先頭に最大約2キロに及んでいた。路面の穴の補修を緊急に行うため、午後10時から岡谷インターまでが通行止めになった影響だった。
アパートを引き払い、実家へ帰る途中の悲劇
「大学は週1回になるから(アパートは)もういいんじゃないの」。家族でこんな会話をしたのは夏ごろだった。帝京大4年生だった優太さんは卒業まで残り2単位となり、実家から通うことにした。11月からアパートの荷物を運び始め、事故当日で全て運び終えるはずだった。 2日前に実家から出かけた際、優太さんは母に「車を借りるね」と声をかけた。母は「(荷物運びも)最後になるし、ガソリン満タンにしておいたから」と優しく応じた。これが最後の会話だった。