さよなら新鮮マンゴー......。4月から激変の物流「2024年問題」で宅配便はどれだけ遅れる?
■「特売」の弊害 2024年問題の影響は家計にも直撃する。大手食品卸の営業社員がこう話す。 「今後、加工食品や衣料品などで長距離輸送が必要な品目は複数のドライバーで運ぶ中継輸送が主流になるので、物流費高騰に伴う価格改定が避けられない状況になります」 さらに、4月以降は「スーパーで特売の頻度が減る」と、この営業社員は指摘する。 「トラック運転手の拘束時間を長引かせているのは〝荷待ち〟です。遠方から荷物を運んできても、物流センターの荷受け場にはトラックが行列を成し、荷降ろしの順番が来るまで待たなければならない。その待ち時間は2~3時間に及ぶのが普通です」 荷待ちが長引く要因のひとつが、「特売」だ。 「スーパー各社は週末に特売を打つことが多いのですが、そうすると、その週の金曜に小売りの物流倉庫への納品が集中します。平時でも2~3時間の荷待ちが発生する庫内の荷受け場に、大量の特売品が集まってくると現場はパンクし、待ち時間が5時間、6時間とどんどん延びていく。 これは小売業界だけの問題ではありませんが、荷待ちが長引いても運送会社に追加料金が払われることは少なく、運転手の労働時間をムダに引き延ばす格好となっています」 国交省は、こうした荷待ち問題や不当な取引を監視する専門部隊、「トラックGメン」を23年7月に創設し、荷主企業に目を光らせている。 「スーパーが悪いわけではありませんが、特売という小売り側の都合で長時間の荷待ちが発生しているのは事実。トラック運転手の拘束時間が規制される4月以降、スーパー各社は特売を打ちづらくなるはず」(食品卸・営業社員) ■「翌日配送」の崩壊 では宅配はどうなるか? 厚労省が実施したトラック運転手の実態調査によると、21年度、年間の拘束時間が3300時間を超えていた宅配事業者は29.1%に上っていた。 「宅配も長時間労働が深刻。規制が始まる4月以降は、これまで当たり前だった『翌日配送』が成り立たなくなっていくでしょう」(業界紙記者) 実際、ヤマト運輸は一部地域で翌日配送をやめると発表した(23年6月)。2024年問題への対策が急務となる中、今後も翌日配送エリアが縮小されていく公算が大きい。 ただ、ECサイト最大手のアマゾンは例外という。 「アマゾンの荷物を末端で運んでいる宅配業者の多くは個人事業主です。彼らがどれだけ働こうと行政の目は行き届かず、同社にとっては直接の雇用関係がないので労務管理の責任を問われにくい。だからアマゾンの翌日配送サービスはあまり影響を受けないんじゃないかと」(前同) だが、前出の森田氏は「インボイス制度が始まった影響で、今後、アマゾンの宅配から撤退する個人ドライバーが増えるんじゃないか」という。 インボイスとは、それまで消費税負担を免税されていた、年商1000万円以下の個人事業主に納税を促すもの。免税のままでいるか、納税事業者になるか?は、あくまで事業者の任意となるが、免税事業者のままだと、取引先に税負担を強いる形となる。 「そのため直接的ではないものの、アマゾンの元請け会社から納税事業者になることを示唆されている個人ドライバーが多い。ただでさえ低収入なのに、売り上げから消費税10%も引かれたら生活が成り立たなくなる、という人も少なくありません。今後、アマゾンの宅配をやめる運転手が続出する恐れがあります」(森田氏) 取材・文/興山英雄 写真/時事通信社