高校時代は"自然科学部" 大学でアツい話を浴びて、アメフト部へ 物理が好きなOLは、年明けの成人式が楽しみ
最初はアメフトをやりたくなくて、逃げ回っていた
清水東高校のOBで東北大工学部材料科学総合学科の教授をしている人がいて、高守が高校生のときに出張講義に来てくれた。その際に興味を持ち、その教授から学びたくて東北大工学部が第1志望になった。そして現役で合格。「でも、その先生が今年で定年退職で……。研究室をどうするか困ってます」 入学してキャンパスを歩いていると、「デカいね」と声をかけられた。アメフト部の人だった。高守は受験勉強の時期に太り、体重は100kgほどあった。会うたびに勧誘された。最初はやりたくなくて逃げ回っていた。3、4回食事をおごってもらって、めちゃくちゃアツい話を浴びて、高守は入部を決意した。「静岡から来て友だちが全然いないんで、大きいグループに入って友だちがいっぱいできそうっていうのがデカかったです。あとは体を生かせそうだったし」 最初からラインになった。コンタクトスポーツは初めてだったが、不思議と当たりに恐怖感もなかった。OLというポジションが「自分に合ってるかもしれない」と感じた。秋のシーズンが始まり、リーグ初戦でセンターの先輩が大けが。早くも高守に出番が回ってきた。そこからスターターで試合に出ている。相手のDL(ディフェンスライン)やLB(ラインバッカー)がどう動いてくるか分からず、ブロックするだけでも難しいのに、センターにはまずスナップという大仕事がある。ミスが許されないため、高守は練習前や練習後に手の空いている人にお願いして、スナップを受けてもらった。それでも試合数が少なくて経験値を積み上げにくいこともあり、不安なくスナップできる域には達していない。
4年になったらオフェンス全体を引っ張っていけるように
高守は両目の下にまぶしさを軽減するとされる「アイブラック」を塗って東北学院大戦に出ていた。試合前、4年生OLの江上遼太郎(八戸)に塗ってもらった。江上はこの試合をけがで欠場したが、身長185cm、体重130kgでホーネッツ最強のOLだ。高守は「江上さんの分まで」との思いで試合に臨んでいた。 目指すOLもずっと江上だ。「強いです。自分とはスタートが違うし、動きにキレもある。もっとまねしないとな、って思ってます。スタートをもっと攻めなきゃと思ってます」。そのためには何よりもまず、百発百中のスナップを出せるようにすることだ。 ランプレーで体を張って穴をこじ開ける。そしてOLの5人でオフェンスを盛り上げていく。そんな瞬間にこのポジションの楽しさを感じるという。最初はあまりにも目立たないことに驚いたこともあったが、もうそれを上回る喜びに出会えている。「1年生から出してもらってるんで、4年になったらOLだけでなくオフェンス全体を引っ張っていけるようになりたいです」 年明けの成人式で静岡の友だちに会うのが楽しみだ。「デカくなったねー、って言われるでしょうね」と笑う。その前に広大に勝ち、立命館に挑戦だ。自然科学部の部室でゲームに明け暮れていた少年は、アメフトを始めて変わった。
篠原大輔