村上　実績十分のリーダー（柳田）が率先して動いてくれると、こちらとしてはありがたいよね。でも、もっと感謝したいのは（中村）晃と今宮。伝統ある「ホークスの野球」を知っている選手なので。川崎（宗則）や本多（雄一）、長谷川（勇也）や内川（聖一）、松田（宣浩）といった選手たちから受け継いできた伝統を、後輩たちに見せてくれている。

（続けて）

たとえば控えの選手ってベンチでどうしても後ろの列に座りがちで、俺なんかが声を出すと、どうしても引いてしまう選手がいる。そうしたらある日、2軍から戻った晃が代打の準備をしつつスッとベンチの前に出てくれた。みんなが前に出るムードを作ってくれた。晃にあとで「ありがとな」と声を掛けたら、「意識してやりました」と笑ってた。今度は栗原たちが引き継いでいってくれれば、ホークスの伝統は継承される。

星野　栗原は故障者が多く出る中で6番、3番と打順が変わる中でも結果を残した。柳町や正木といったさらに若い選手たちが次々と出てくるのも強さの証明だね。

村上　正木なんて山川、近藤の後ろを任されて、苦しい思いをしている。でも、自分で打破するしかない。目の前で申告敬遠を繰り返されて打てなくて。冷静さを失って何でも必死で振りにいって…。打撃練習のときに悔し涙を流していた。そこで話をしてね。気持ちはよく分かる。俺もそうだったから。

星野　村上コーチの現役時代の経験が生きるわけだ。

村上　どこかの誰か（魔球と呼ばれた伝説のカーブを武器に176勝した星野氏のこと）の〝ヘナヘナしたカーブ〟をムキになって必死で打ちに行って空振り。よく見たらすべてワンバウンドなのに、冷静さを失ってね。

星野　ヘナヘナしてない。全力で投げてたわ！

村上　冷静にならないと（笑）。「自分が良かったときのことを思い出せ。割り切りやろ。打てない球は振らなくていい」。そんな会話をしていたら、ある日、打てて。正木も一つ乗り越えた。技術を持っている選手が、いい経験をした。こんなときも監督は黙って見てくれている。