岸田首相への渾身のツッコミに賛辞止まず!──堤伸輔「いったいどの口が言っているのか!」
この時も政治メディアは首相の言葉をそのまま“通した”が、私は『報道1930』で異を唱えずにいられなかった。すると、熊本の高校時代の友人から久しぶりに連絡があった。「堤、よくぞ言った!」と。だから私はしつこくこの種の「勘違い発言」を批判し続ける。 安倍派の「責任転嫁5人衆」の言葉も凄い。時効がまだ成立していない期間だけでも「2728万円不記載」の萩生田光一・前政調会長が「(自分の)政治活動専念のためカネは事務所のスタッフが管理していた」とのたまえば、「1542万円不記載」の世耕弘成・前参院幹事長は「資金の管理は完全に秘書に任せていた」と嘯(うそぶ)く。萩生田氏はスタッフの「机の鍵のかかる引出し」にカネは入っていたと妙なところだけ饒舌だし、世耕氏といえばかつて小沢一郎氏の「陸山会事件」の際に「私は貴重な時間を犠牲にして担当秘書にひとつひとつ質問しながら(政治資金の)書類を提出している」と、秘書だけが立件されて小沢氏はおとがめなしだったことを痛烈に批判していた人物だ。ここに名前を挙げなかった面々も、そして5人衆以外も、他の派閥の不記載ボスも含め、会計責任者すなわち秘書に責任をおっかぶせていることに変わりない。 今回、現時点で立件された10人のうち、議員は“小物”とも称される3人のみ。あとの7人は会計責任者だ。特に、大野泰正参院議員と谷川弥一前衆院議員の2人の場合、ともに女性秘書も在宅もしくは略式で起訴された。谷川前議員の秘書は自分の娘、大野議員の秘書は「会計責任者補佐」だという。 おそらく自分の判断など加えず会計処理していただけの末端の女性秘書たちが立件され、“大物”かどうかは知らないが、派閥の領袖やら幹部やらは責任を人に負わせて知らぬ存ぜぬを決め込む。この国の政治家は卑怯者たちの集まりだ。 そして、みずからも含め、そういう政治家たちに本気で襟を正させることはせず、「私自身が先頭に立って」とか「火の玉となって」とか、「どの口がシリーズ」を吹かし続ける岸田首相。カネ政治は退治できなくても、この先もそのレパートリーを増やしてくれることだけは間違いなさそうだ。(1月30日記)
堤伸輔 1956年、熊本県生まれ。1980年、東京大学文学部を卒業し、新潮社に入社。作家・松本清張を担当し、国内・海外の取材に数多く同行する。2004年から2009年まで国際情報誌『フォーサイト』編集長。2020年末に新潮社を退社。BS-TBS『報道1930』のほか、テレビ朝日の『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』『中居正広の土曜日な会』などの番組でレギュラー/ゲストの解説者・コメンテーターを務める。 編集・神谷 晃(GQ)
文・堤 伸輔
【関連記事】
- 【写真を見る】岸田首相のドヤ顔、泣き顔、笑い顔
- 2023年の出来事を堤伸輔が振り返る──「大谷翔平」「WBC」「藤井聡太」「YOASOBI」ほか、ライブエンタメ“超・私的”10大ニュース
- 2023年の出来事を武田砂鉄が振り返る──「パーティ券」「岸田首相」「大阪・関西万博」「マイナンバーカード」ほか
- WBC・大谷翔平&ヌートバー、サッカー・三笘薫&三浦知良、フィギュア・羽生結弦ほか ──2023年に最も読まれたスポーツの記事は?『GQ SPORTS アクセスランキング』
- 『孤独のグルメ』の井之頭五郎とタグ・ホイヤー、「2ドルのロレックス」、オメガ×スウォッチ「ムーンスウォッチ」ほか ──2023年に最も読まれた腕時計の記事は?『GQ WATCHES アクセスランキング』