自身の腎臓提供後に腎不全発症の女性、ブタの腎臓移植受ける 米
(CNN) 米アラバマ州のトワナ・ルーニーさん(53)は先月25日、ニューヨーク大学(NYU)ランゴン移植研究所でブタの腎臓の移植手術を受けた。11日後には施設を後にすることが出来るようになり、担当した医師らは今月17日、術後の経過は良好だと発表。腎臓は想定通り機能しているとの見方を示した。 【写真】移植前に測定されるブタの腎臓 現時点で、機能しているブタの腎臓で生きている人物は世界でルーニーさんだけだが、主治医は向こう10年以内に今回のようなブタから人への臓器移植は主流になる可能性があると予測する。 1999年、ルーニーさんは母親の命を助けるため腎臓一つを提供していた。しかしそれから何年も経過した後で腎不全を発症した。全米腎臓財団によれば、腎臓ドナーになった後で腎不全にかかるケースは100人中1人に満たない。 妊娠中の妊娠高血圧腎症により、ルーニーさんは2016年に人工透析を開始。翌年には腎臓移植待機リストに名前が載ったが、主治医からは透析の継続に必要な血管が徐々に失われていることを告げられた。このまま適合するドナーが見つからなければ死ぬことになるという。 ブタの腎臓を移植する選択肢について、最初にルーニーさんに知らせたのは、当時アラバマ大学のメディカルスクールで移植部門を統括していたジャイメ・ロック教授。遺伝子改変されたブタの腎臓が生きた患者に移植されるのはルーニーさんで3例目だったが、ルーニーさんは迷うことなくこのチャンスに乗った。ロックさんが移植を受けるかどうか質問し終わる前に同意を伝えたという。 ロック氏は異種移植の見込みについて説明し、実験的な手術に同意する理由を尋ねた。ルーニーさんは人々の助けになりたいからだと答えたという。 ロック氏は17日、移植直後にもかかわらずルーニーさんが活気に満ちた状態だとし、異種移植が人々にもたらす利点がそこに表れていると指摘した。 ブタの臓器は人間のものと似通っている。ブタは急速に繁殖することから、その臓器は調達が容易になると考えられる。科学者はブタの遺伝子を改変し、その臓器に対して人体が拒絶反応を示すリスクを低減している。 当面ルーニーさんは毎日検査が受けられるように研究所近くのアパートで暮らす。医師らのチームは人工知能(AI)や装着型の機器を駆使して、ルーニーさんのバイタルを常時追跡可能な状態にしている。 ホリデーシーズンをアラバマで過ごすことは出来ないが、医師らによれば何も問題がない場合、ルーニーさんは3カ月以内に自宅に戻り、これまで通りの質の暮らしを家族や孫と送れる予定。