"右翼"に転身したほうが食える!? 「政治結社」を組織するヤクザが増加中
さらに、そうした政治結社のなかには、街宣車を動員して企業や団体に抗議活動を行ったりする目立った「右翼」的な活動をしない政治結社もある。 「実は、日本最大の指定暴力団である山口組が結成に関わった政治結社もあります。1963年に田岡一雄・三代目組長が中心となってつくられた『麻薬追放国土浄化同盟』がそれです。文字通り、『麻薬追放』を掲げる団体ですが、当初から『山口組の東京進出の隠れ蓑として使った』との指摘も受けていました。 1992年には当時の自治省(現在の総務省)に政治結社として届け出ており、現在も『プラチナ』と呼ばれる執行部幹部が代表を務めています」(前出の社会部記者) 表だった活動はほとんど行われていなかった政治結社だが、にわかに注目を集めたのが暴力団排除条例が全国で一斉施行された直後の2013年。突如、団体の名前を冠したウェブサイトを開設し、阪神・淡路大震災でのボランティア活動を喧伝するなど、山口組の「社会的」な側面をアピールし始めたのだ。件のウェブサイトはその後、投稿のほとんどが削除されてしまったが、タイトルページだけはいまも残ったままだ。 このように、何かと関係が深い暴力団と「政治結社」の関係性だが、四国での銃撃事件で凶弾に倒れた男性は、わざわざ暴力団を離脱してまで団体をつくっているのだ。 ■ヤクザより右翼やった方が食える 背景にはどんな事情があるのか。 「ヤクザをやっているよりも、右翼をやっているほうが食っていける。それが一番大きな動機ではないでしょうか」と指摘するのは、前出の社会部記者だ。 「暴力団と、『政治結社』いわゆる右翼の決定的な違いは、社会的な扱いの差です。暴力団は暴排以降、『反社』と呼ばれて銀行口座も作れなくなるなど、徹底的に表社会から排除されました。 一方、右翼の場合は、公安調査庁の監視対象とはなるものの、警察当局から暴力団ほどの苛烈な取り締まりは受けません。暴力団は正式な組員だった場合は、組織から離脱した後も、数年は警察のリストから外されません。いわゆる『Gマーク』が取れるのは、一般の組員なら5年、幹部なら10年はかかると言われている。 こんな現状では、堅気になろうと思っても、社会復帰は相当に困難なわけです。元ヤクザにとっての社会復帰の数少ない選択肢として『政治結社』というものがあるという側面は否めません」(同) 命(タマ)を取る者、取られる者。血なまぐさい事件から裏社会で起きている変動の波が仄見えてくる。 文/安藤海南男 写真/時事通信社、愛媛県警