『フェルマーの料理』『波よ聞いてくれ』『大奥』 小芝風花は“いま一番の人気者”
現在放送中の連続ドラマ『フェルマーの料理』(TBS系)に出演中の小芝風花。新進気鋭の一流フレンチレストラン「K」を舞台に、数学者を志すも挫折した天才数学少年・北田岳(高橋文哉)が料理の世界に自分の居場所を見つけるところから物語は始まる。小芝風花が演じるのは、二つ星レストラン「K」で前菜を担当しているシェフの赤松蘭菜。「K」のオーナーシェフで謎めいた料理界のカリスマ・朝倉海(志尊淳)は大きな秘密を抱えているようだし、蘭菜もクールに振る舞いつつ、時々何か思いつめたような表情を見せる。 【写真】金髪のミナレさん! 小芝風花インタビュー撮り下ろしカット それぞれに悩みや問題を抱えていたりするなか、数学的才能で料理の世界に挑む北田岳の成長が周囲にも影響を与えていく……。小芝は今回始めてプロの料理人の役を演じるにあたり、包丁さばきを練習したというが、器用でセンスがある人というのは本番になると最大限にその能力を発揮できるものらしい。人気、実力ともに兼ねそなえ、途切れることなく作品に出演し続け、快進撃を続けている。 2023年に小芝風花が出演したドラマを振り返ると、『天使の耳~交通警察の夜』(NHK BS・NHK BSプレミアム4K)、『波よ聞いてくれ』(4月クール/テレビ朝日系)、『転職の魔王様』(7月クール/カンテレ・フジテレビ系)、『フェルマーの料理』(10月クール)と話題作が並ぶ。12月からは『あきない世傳 金と銀』(NHK BS・NHK BSプレミアム4K)で主演を務めることも発表されており、全局違うというのも人気者ぶりが窺われる。 そして、小芝風花が主演の木曜劇場『大奥』(フジテレビ系)が2024年1月にスタートする。フジテレビ系で『大奥』が放送されてから20年以上(!)ものときを経て、新たな令和版の『大奥』が誕生することになった。小芝が演じるのは、徳川家治と愛のない政略結婚を強いられた主人公・五十宮倫子だ。少し意外ではあるのだが、本作でフジテレビ制作のドラマでは初主演を果たすことになる。 フジテレビの『大奥』というと、さまざまな人間の思惑、嫉妬、憎悪、悲哀が渦巻く“女の社会の縮図=大奥”で、もがく女たちの壮絶な生き様を描いている印象が強いが、この冬に放送される物語は、“愛”をテーマにした『大奥』史上、最も切なくて美しいラブストーリーということだ。 初主演映画が『魔女の宅急便』(2014年)で絶賛され、頑張っているけなげな姿を応援したくなることもあり、彼女にはお仕事ものがよく似合う。 『波よ聞いてくれ』ではスープカレー店でアルバイトをしていたが、失恋トークを炸裂させたことでラジオパーソナリティーに大抜擢される鼓田ミナレ。『転職の魔王様』ではパワハラで大手広告代理店をパワハラが原因で退職して、キャリアアドバイザーになった羊谷千春。『フェルマーの料理』ではシェフの赤松蘭菜。12月スタートの『あきない世傳 金と銀』では、大阪の呉服屋「五鈴屋」に奉公に出たことがきっかけで商才があることがわかる幸。仕事を通じて大切なことに気づいたり、素敵な仲間と出会ったりしながら、成長していく。そんなキャラクターを観て自分のことのように感じ、自分の現在の環境を客観的に捉えなおす人も多いのだろう。 一方で、中島健人とのダブル主演で注目された『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系)のような王道をいくラブストーリーのヒロインも切なく、演じ切った。振り回す役も、振り回される役もどちらも器用に演じられる。シリアスな役もコミカルな役も、時代劇でも、それぞれで魅力を放つことができる。視聴者に、そして作り手たちに、また違う役柄も観たいと求められ続けるのは役者冥利に尽きるというもの。小芝風花は、“いま一番の人気者”と言っても過言ではないだろう。
池沢奈々見