「話芸の一番トップは古典落語、それを基本として新作を作る」柳家小ゑんインタビュー
ぴあがスタートした落語の動画配信サービス「ぴあ落語ざんまい」の月間視聴回数ランキングで、「2023年3月」に1位を獲得した落語家、柳家小ゑん。2000演目以上の演目がアップされているサブスクリプションサービスにおいて、会員の皆さまからコンスタントに毎月のランキングでも高い人気を獲得している小ゑん師匠のインタビューをお届けします。 【全ての画像】柳家小ゑん師匠インタビュー写真(全8枚) ──落語家になるまでの経緯を教えていただけますか。 目黒の電気屋に生まれて、気が付いたときにはテレビも売るほどあって(笑)。うちの爺さんが落語を好きだった。あの頃、昭和30年前半でテレビの創成期、中継で落語を観てました。高校になって落語研究会を作って、大学に入っても学園祭でやったり。電気工事の手伝いとか中学のときに電気工事師の免許を取ったり、アマチュア無線の真似事とかやってた。親は兄貴に経営をやらせて技術方を私にやらせて後継ぎにしたかったんでしょうけど、大学の頃はオーディオマニアでレコーディングミキサーになりたかった。 ──多趣味である師匠が、落語家になってみたいと弟子入りしたのはなぜですか。 (柳家)小さん師匠が一番好きだったということもあったし、昔風の修行をさせてくれるところとして弟子入りした。両親は最初反対したけど、辞めたら家業を継げという条件で。内弟子ではなく通いで4年3カ月。孫の(柳家)花緑(師匠)がよく遊びに来ていたので“お馬さんごっこ”してやりました。 ──小さん師匠はどんな師匠でしたか。 誠意がないことをするとものすごい怒りましたね。あと“間が悪い”ことは芸に通ずるんだと言われました。稽古はほとんどしないで“盗め”と。 ──古典落語と新作落語を共におやりになりますが、小ゑん師匠にとってはどんな位置づけですか。 前座のときからずっと古典落語をやって、新作をやり始めたのは(三遊亭)圓丈師匠に誘われて渋谷ジァン・ジァンの「実験落語会」で。二ツ目の頃は高座がないから、高座があると嬉しくて。僕、少しひねくれてて、人と同じようにやるのがあまり好きではなかった。話芸の一番トップは古典落語なんですよ。それを基本として新作を作るというのが僕の考え方。人物の描写、場面の転換の仕方、そういった基本は古典落語にあるので、それを利用して新作落語を作るということ。 ──師匠は鉄道とか天文とか、多趣味な一面を活かして噺を作るのがお上手な印象があります。 二ツ目の頃は暇なんですよ。暇だからステレオいじったり天文用のカメラ作ったりとかそんなことばかりやってました。好きなことがいっぱいあってグラデーションのようにテーマ落語もその中のひとつみたいな感じ。好きなことがたくさんあったほうが良いですよ、人間は(笑)。変なことに悩んだりしないから楽しい。