『北斗の拳』ユリアはなぜ漢達の命を散らしてまで「最後の将」として動いたのか?
「拳」ではない「将としての役割」とは?
『ユリア伝』によると、ユリア自身が元々「南斗六聖拳の将にして慈母星」という自分の宿星を知らされておらず、南斗正統血統の自覚もありませんでした。だから、大半の南斗聖拳の拳法家ですら、ユリアを認識していなかったわけです。 なお、早くにして両親を失ったユリアには、庇護者であるダーマが仕えており、兄「リュウガ」とともに庇護されていました。ただし、リュウケンに保護されたのはユリアだけで、同じく南斗正当血統であろうリュウガが保護される描写はなく、ユリアの異母兄であるジュウザとの関わりもよくわかりません。 シンにユリアが拉致された後、ユリアは飛び降り自殺を図りますが、フドウらに救出され「南斗六聖拳の将」の元に案内されます。将とは、育ての親でもあるダーマでした。 ダーマはユリアに「貴女こそ、南斗聖拳108派を束ねる要。慈星の宿星を持つ正統血統者。南斗最後の将なのです。南斗乱れる時北斗現る。その北斗と共に最後に現れるがゆえに、南斗最後の将と呼ばれるのです。そして、北斗と南斗が結ばれる時、必ずや奇跡が起こりましょう。天が貴女に与えた予知の力は、そのためのものだったのです」と告げます。 ユリアは「苦痛でしかなかった予知の力に、そんな宿命が」と驚愕し、ダーマは「宿命の時を待つことが、貴女の役目だった。もう、待つのは終わりです」と言い、ユリアは自分の宿星を理解して、最後の将となったわけです。 つまりユリアは、南斗最後の将である、慈母星の宿命に従い「人々を救う救世主になりつつあるケンシロウを、全てを捨ててでも守り、支えるために生まれてきた」と確信し、行動しているのです。なお、ケンシロウがラオウを倒したことで数年間の平安が訪れており、それが「北斗と南斗が一体になったことで、天が平定される」という伝承の通りということなのでしょう。 星の宿命に導かれるように登場人物が行動する『北斗の拳』の中で、自覚がなくてもユリアは、北斗と南斗をひとつにする慈母星に導かれていたのかもしれません。
安藤昌季