竜王山の桜がピンチ 老木化とテングス病拡大、求められる適正管理ビジョン【山陽小野田】
竜王山(標高136㍍)の桜がピンチに立たされている。今年も満開の様子を楽しもうと大勢の花見客が繰り出したが、老木が増えたのに加えて大敵とされるテングス病が広がり、1万本の桜の名所の行く末が心配されている。 市街地から近い自然豊かな竜王山は〝市民の山〟として親しまれている。桜の名所にと1950年代から年間数百本のソメイヨシノが植樹されてきた。市緑化推進協議会が主催する「希望の森植樹」でも20年間にわたり、結婚や還暦などの節目に市民らが記念植樹を行ってきた。 約7500本に増えた桜の木を「1万本にしよう」と盛り上がり、99年に1万本化計画がスタート。小野田商工会議所や竜王山公園協賛会が中心となって市民や企業から寄付を募り、ソメイヨシノを植樹。2001年には、1万本の大台に達した。春には山全体をピンク色に染め、〝桜のトンネル〟となった登山道では花見客の歓声が上がる。 そんな桜の名所で寿命60年と言われるソメイヨシノは老齢期を迎えた木が多くなり、十数年前からテングス病にかかった木が確認されるようになった。管理する市都市計画課の高橋雅彦課長は「ここ10年間で、花が咲かず空間になっている箇所が多く見受けられるようになった」と話す。 テングス病はカビの仲間で、糸状菌により伝染する桜類の病気。花が付かず、やがては枯れてしまう。名前は、桜の枝がこぶ状に変形し巣のようになったさまを天狗の巣に例えたことに由来する。 市は14年度から対策に着手。病気にかかった枝を切り落とし、老木を含めて年間10~20本を伐採してきた。その後にはテングス病に強いとされる品種エドヒガンやジンダイアケボノに約60本を植え替えた。 萩市の笠山ツバキ群生林を管理する同市の樹木医、草野隆司さんは現地を見て回り「10㍍間隔で植えてほしいが実情はその半分の間隔」と密植による弊害を指摘する。登山道を往来する人や車の安全確保のためにも、老木や病気の枝の剪定(せんてい)や伐採が急務という。 草野さんは「数ありきの時代から、これからは適正管理が重要となる。育ちやすい環境づくりを念頭に桜の品種ごとに適材適所にレイアウトするなど20年後、30年後を見据えたビジョンづくりが求められる」とした。 古里自慢の桜の名所。関係者は竜王山の桜物語が未来に紡がれるのを願っている。