幻の原爆映画と呼ばれた「広島・長崎における原子爆弾の影響」35mmフィルム上映
記録映画「広島・長崎における原子爆弾の影響」完全版の35mmフィルム上映が、8月10日に広島・広島市映像文化ライブラリーで行われる。 【画像】「広島・長崎における原子爆弾の影響」に記録された、街の様子 「広島・長崎における原子爆弾の影響」は、1945年9月、学術調査団に同行した日本映画社の撮影隊が、広島と長崎の被爆状況をカメラに収めたもの。演出は伊東壽恵男、小畑長蔵、奥山大六郎、山中真男、相原秀二が手がけ、撮影は山中真男、三木茂、鈴木喜代治、俣野公男、坂斎小一郎、藤波次郎、今野敬一が担った。 同作は1946年に完成したがGHQに接収され、長らく“幻の原爆映画”と呼ばれてきた。今回は、ノーカットの英語ナレーション版に日本語字幕を付けた完全版がスクリーンにかけられる貴重な機会だ。 ■ 「広島・長崎における原子爆弾の影響」完全版35mmフィルム上映 2024年8月10日(土)広島県 広島市映像文化ライブラリー 10:30~ / 15:00~ 料金:大人 510円 / 65歳以上 250円 / 25歳以下 無料 ※上映時間164分 ※途中休憩あり ■ 「広島・長崎における原子爆弾の影響」完全版のフィルムが所蔵されるまでの経緯 「広島・長崎における原子爆弾の影響」は、広島と長崎における原爆被災の状況を調査する日本の学術調査団に、日本映画社のスタッフが同行して撮影し、1946年に35mmフィルム版として完成された。GHQはこの作品に関するすべての素材の提出を命じたが、当時のプロデューサーたちがラッシュ・プリントを密かに日本に保存していた。一方、「広島・長崎における原子爆弾の影響」は、完成から21年ぶりに1967年に日本に返還されたが、それは16mmフィルム版だった。その16mmフィルム版をもとにした短縮版がテレビ放映されたが、短縮版では原爆の惨状が伝わらないと被爆者団体などからノーカット版の公開を求める声が上がった。その後、「10フィート運動」により1982年に東京、広島、長崎でノーカット版が上映され、1996年には日本語ナレーションによるノーカット版が作られた。 そして、2009年に、広島市映像文化ライブラリーは、東京国立近代美術館フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)の協力を得て、この「広島・長崎における原子爆弾の影響」の1946年版オリジナル英語ナレーションによるノーカット版の日本語字幕付き35mmフィルム版を作成して、広島市の恒久コレクションとして所蔵した。これは、米国国立公文書館所蔵の35mmマスター・ポジからデュープ・ネガを起し、それをもとに35mmニュープリントを作成したうえで日本語字幕を付けたものである。日本人によって吹き込まれた英語ナレーションや付けられた音楽なども含めて、1946年に完成版として見られた長篇記録映画のそのものの全容を鑑賞できるフィルムである。