ジャニーズ新サービスに賛否 「こっちに降りてこないで」と思うファン心理とは
“遠い”けれど、それもジャニーズの魅力
霜田明寛: 2005年以降、世間一般に「会いに行けるアイドル」という文化が定着してきていました。握手会やイベントで直接密なコミュニケーションをとることができるなど、アイドルとファンの距離は“近い”傾向にあります。しかし、ジャニーズは安易にそのブームに乗りませんでした。基本的に握手会は行いませんし、会いたい場合は高い倍率を潜り抜けてチケットを当てるしか手がありません。コンテンツを楽しむためには対価が必要であることが当たり前で、近年の無料コンテンツに対しても「お金を払わなくていいのかな?」という心理にすらなってしまう。どこか崇めているというか、“推し”は同じ地平線上にいるものではなく、自分たちよりも上に位置している存在なんですね。前者の「会いに行けるアイドル」と比較すると、ジャニーズタレントとファンの距離は“遠い”ですが、それすらもジャニーズの魅力だと言えるでしょう。 だからこそ、いきなりタレントと直接会話ができるほどに距離が“近く”なってしまう「Johnny’s Family Voice」に対して、ファンが戸惑ってしまうのは仕方がないことですよね。「こっちに降りてこないで」「距離を縮めてこないで」。このファン心理は、ジャニーズが長年かけて培ってきたブランディングの、ある種の成果だと思います。 このような状況で、「Johnny’s Family Voice」のリリースを検討するのは、事務所にとって大きなチャレンジです。個人的には期待と不安が半分ずつですが、ジャニーズ事務所の素晴らしさは、伝統を守りつつ新しいことに挑戦していく姿勢だと思っています。挑戦を支えているのは、長い時間をかけて培ってきた「ファン文化」ですので、文化を担ういちファンとして見守っていきたいです。 ====== 霜田明寛(しもだあきひろ) 『ジャニーズは努力が9割』著者/文化系マガジン・チェリー編集長。東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。3冊の就活・キャリア関連の本を執筆後、ジャニーズタレントの仕事術とジャニー喜多川氏の人材育成術をまとめた4作目の著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)が5刷・3万部のヒット。また、文化系WEBマガジン・チェリー編集長として監督・俳優などにインタビュー。SBSラジオ(静岡放送)『IPPO』準レギュラー、映画イベントの司会も務めるなど、書く・話すの両面で、ドラマ・映画・演劇といったエンターテインメントを紹介している。