「安倍談話」注目すべきポイントは? 米ボストン大教授が解説
「戦争の経験で傷つき苦しんだ人々がいる。そして、彼らの周りには、それらの犠牲者に同情し共感して動く人々がいる。その観点からは、癒しの必要を表明し、人間的なレベルにおける正義を求めることは常に正しく、謝罪が必要なのだ。しかし、それを行うのは不可能だ。世界にいる全ての苦しむ人々に反応するのは絶対に不可能だ。さらに、もしそれを行うと、全ての人々がそれを悪用し、被害者だと主張する動機ができる。もし謝罪すると、操作される。重要な点は、政治的な実現性と、人間的で社会的で心情に基づいた正義の要求とのバランスを見つけることだ。これが、政治的な決断というものだ」 安倍首相は、日本政府の代表として、謝罪したことがなかったわけではない。「彼がアメリカ政府を訪問した際、また多くの海外の演説で、安倍政権は過去の政権の政策を踏襲すると述べた。数ヶ月前にはオーストラリアのキャンベラを訪れ、戦争捕虜だった人々に対する意思表示を行い、それらの国々で好意的に受け入れられた」。しかし、「問題の本当の核心は当然ながら、日本と近隣諸国との関係」、つまり中国や韓国との関係だ。「一体中国と韓国は今日どの程度、理解を示すことができるのだろうか。安倍首相にとって和解の道を歩む決断をするためには、彼は何か見返りを期待しなくてはならない。これがどのように日本の国益を向上させるのか、と」と教授は指摘する。 被害者の心情に沿った正義と、国益を考えた政治的な実現性。このバランスを安倍首相がどのような文言で取るのかが、注目される。
「戦後70年談話」はこれまで以上に重要
バーガー教授は、「我々が今日置かれている皮肉な状況のひとつは、戦後70年が経ち、これらの問題が、どういうわけか、例えば戦後30年の、より戦争が近かった時よりも、より顕著になっているということだ。これらの『歴史における正義』の問題が、いま、安全保障の問題や領土紛争とも、より密接に絡み合ってきているからだ」と話す。