「551蓬莱」の豚まんにインスパイアされた〝創業者の孫〟の店「東京豚饅」に行列
【肉道場入門!】★絶品必食編 2年と少し前、大阪の老舗「551蓬莱」の〝創業者の孫〟の店「東京豚饅」が東京・恵比寿に忽然と現れ、瞬く間に行列のできる超人気店となった。経営は551とは無関係のようだが、味の方向性としては「551蓬莱」を彷彿させるニュアンスはある。「あの作りたての豚まんの味を東京でも」というコンセプトの通り、小麦香るもちもちとした自家発酵の皮に、肉と玉ねぎを軸足とした甘やかなたっぷり肉餡は玉ねぎのシャキッとした食感も楽しい。 ひとつ食べると「もうひとつ!」と手が伸びてしまいそうな軽やかさは、「551蓬莱」の味を現代風にチューニングしたような味わいだ。 一方〝本家〟は味、香り、脂由来の肉汁が強い。関西人なら一口で「これや!」と魂が喜ぶインパクト満点の味わい。だからこそ郷愁を誘い、土産物需要の強い新大阪駅や京都駅では長蛇の列ができる。とはいえ、強い香りは新幹線車内で食べるのにはなかなかの勇気が必要だ。 一方「東京豚饅」は蒸したてを車内に持ち込んでも、さほど周囲を気にすることはなさそうなくらいの匂い。一定の強さはありながらも、広く万人に受け入れられそうな味と香りだ。 その「東京豚饅」が(恵比寿本店を一時閉め)JR新宿駅構内のド真ん中に4月、オープンしたフードコート「EATo LUMINE(イイトルミネ)」に進出し、開店前から行列ができる人気店となっている。 恵比寿店は途中から人気が過熱してしまい、当初複数あった饅頭のラインアップが〝豚饅〟に1本化されてしまっていたが、新宿店ではその昔人気だった胡椒香る、黒胡椒味が復活。恵比寿でも人気だった焼売や甘酢団子も健在だ。 オープンから一週間ほど経った日の朝9時50分に店頭を訪れたらだいたい20番目の並び。開店時間の10時には、後ろにもう20人ほど増えていた。 行列に参加する最後尾はフードコート外のコンコースに設定されているが、先にメニューが渡されるので進みはスムーズ。20番目でちょうど10時20分にお会計と存外に進みがよかったので、すぐ食べる肉饅2種のほか、かわいい保冷バッグに入った豚饅と焼売のチルドセットまで購入してしまった。豚饅だけじゃなく、ご商売までうまかった。 ■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しい。新著「教養としての『焼肉』大全」(扶桑社刊)発売中。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。