同期に「観察日記」をつけられ…長与千種が明かした“壮絶なイジメ”の記憶「おまえ、負け犬になんのか」クラッシュ・ギャルズ結成前の知られざる苦悩
創業一族から言われた「おまえ、負け犬になんのか」
――ハブられる世界とおさらばしたはずなのに、女子プロの世界でも続いてしまったと。 長与 そう、そう。自分にいじめられる要素があったなら、自分も良くはなかったけど、それは漠然としていてわからない。いまでも、その答えはわからない。じゃあ、ずっと引きずったのかっていったら、そうではなくって、若いときに人並みに経験したなっていうことかな。いまは同期とごはんを食べに行ったり、そばにいてくれることがとても心地いいし、大人になって何も言わなくても寄り添えるようになった。それまでは子どもだったのかなっていう気がしてる。 ――次のターニングポイントは。 長与 全女から消えないと、自分はずっと笑い者にされたままだろうと思ったので、(創業者の)松永兄弟の国松さんに言いに行ったら、ひとこと、「おまえ、負け犬になんのか」って。会社は自分の何を見てくれてるんだよって。でも、親は親で大変な思いをしてるしっていう板挟みになっちゃった。けど、ある瞬間に吹っ切れて、会社になんと思われようといいや、相手になんて思われようといいや、最後にやりたい試合をやって辞めてやるって勢いで臨んだのが、あのライオネス飛鳥との一戦。 ――83年1月4日に後楽園ホールで行われた全日本シングル王座選手権戦ですね。 長与 殴られたり蹴飛ばされたりっていうのをお互いがしたけども、あれ以降は「おまえらもみんなこうしてやるよ」って本気で思ってた。ほんっとに。だから、怖くなかったんだよね。やられたらやり返すじゃなくて、やられる前にやってやるよっていうのが、完璧に育った時期。 ――クラッシュ・ギャルズが女子プロ界の頂上に立ったとき、かつて観察日記を見てケラケラ笑っていた選手たちを見返すことができたと思いましたか。
洗面器に頭を突っ込まれて…流血の中での学び
長与 それは思ってなかったけど、ただ、常に飢えてる感じ。どういうことかというと、これ1歩、もうちょっとこの角度を上げたら脱臼するだろうな。そのときの音って、どんな聞こえ方をすんのかなって思うぐらい、おかしい状態のときがあった。その前に(相手が)ギブアップしてくれたけど、嫌だったらギブアップすればいいじゃん、殴り返せばいいじゃん、殴り返してみろよって、先輩に対してもそんなことを思ってたから、デビル(雅美)さんにカチコミされた。 ――何があったんですか。 長与 自分が、なめてたんだね。地方のシングルマッチで、リング上でボソッて言われたのが、「リングはケンカするところじゃねぇんだよ」。で、その日のお客さんがたまたま持ってたみかんをガッて奪ってね、自分の目のなかに突っ込むの。ほんっとに目が見えなくなってさ、本物のケンカってこういうもんかって思った。ノーコンテストで終わって、控え室に帰ったら、デビルさんが待ってましたって言わんばかりで待ってる(笑)。「プロレスラーはな、リングでケンカしねぇんだよ。ケンカだったら、いつだってしてやっから。リングはケンカする場所じゃねぇんだよ」って頭をガンッてつかまれて、薄い陶器の洗面器に頭を突っ込まれたら、(洗面器が)割れて、額からピーッて(と血が飛ぶジェスチャー)。 ――何歳ぐらいですか。 長与 19か、20歳。 ――クラッシュ結成後ですか。まだヤンチャだったんですね。 長与 まだイキがってたから(笑)。そこからはね、試合しててもデビルさんがセコンドに来たなぁってわかると、ふっと我に返るの。ビシッて(と背筋を伸ばす)なって、冷静になる。プロレスは技術を競うものであるとしっかり教えてくださったし、プロの洗礼を浴びた。怖かったよ。でも、いつも灯台の役割をしてくださってたような気がする。迷いそうになったときはこの港に着きなさいと、しっかり灯を照らしてくれてたね。《インタビュー第2回に続く》 (撮影=三宅史郎)
(「格闘技PRESS」伊藤雅奈子 = 文)
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