阿武剋3連勝 能登半島地震にも「残った」横綱阿武松の石碑にあやかり「倒れない相撲」貫く【大相撲】
◇12日 大相撲九州場所3日目(福岡国際センター) 入幕2場所目の阿武剋(24)=阿武松=が新入幕の獅司(雷)を上手投げで退け、初日から3連勝とした。1月の能登半島地震にも揺るがなかった元横綱阿武松の石碑にあやかり、「倒れない相撲」を取り続ける。 人生初のまわし待ったを挟んだ長い一番で、阿武剋が”横綱魂”を胸に踏ん張って白星をつかんだ。がっぷりの右四つから獅司の上体を起こして巻き替え、投げをこらえて最後は左からの上手投げ。力を出し切って息を弾ませながら、自己最長タイとなる3連勝の勝ち名乗りを受けた。 まわし待ったもあって「疲れちゃった」と正直に打ち明けた幕内2場所目。巻き替えからの攻めを「がっぷりだと力負けして、苦し紛れで投げていた。立て直そうと思った」と振り返った後、「下から攻めたら強いと思う」と自信ものぞかせた。 能登半島地震の被災地で、倒れない最高のお手本に触れた。新入幕を確実にした名古屋場所後の8月、師匠の阿武松親方(元幕内大道)らと石川県能登町へ足を運んだ。江戸後期に活躍し、所属部屋名にもなっている第6代横綱阿武松の故郷。地元の集落にある阿武松の石碑は、元日に同町で震度6強を記録した揺れでも力強く立ち続けた。 住民の間で「横綱だから『残った』」と明るい話題になった。阿武剋も当時、震災から7カ月でなお残る倒壊した家屋に心を痛めたが、石碑に「何か特別な力があるのかな」と、横綱からあるべき力士像を教えてもらった気がした。 「大相撲は厳しい世界だけど、いろいろなところから力をもらって土俵に上がる。頑張る姿で勇気づけられたら恩返しになると思う」。モンゴル出身で、地震の爪痕を目にしたのは初めて。横綱阿武松がつないだ被災地・能登との縁を大事にしていく。 3連勝スタートにも「まだまだ」と気の緩みはない。日体大4年で大の里との同期対決を制し、学生横綱となった大器が幕内前半の土俵を熱くする。
中日スポーツ