日本映画初の快挙「ゴジラ-1.0」に映像プロ「白組」の存在 予算はハリウッド版の10分の1
米アカデミー賞・視覚効果賞
山崎貴監督の映画「ゴジラ-1.0」(公開中)がハリウッド最高峰の映画賞「第96回アカデミー賞」で日本映画として初めて「視覚効果賞」を受賞した。日本映画初ノミネートでの大快挙だが、「ゴジラ-1.0」はなぜ受賞できたのか。 【写真】「凄すぎます!」とファン歓喜…世界的巨匠と山崎監督の2ショット、浜辺美波は「わーーー!!」と大興奮
快進撃は止まらなかった。「ゴジラ-1.0」は舞台を戦後の日本に巻き戻し、戦争で焼け野原になった東京に、ゴジラが追い打ちをかけるように襲いかかるという ストーリー。ゴジラ生誕70周年記念作品で、日本製作の実写版ゴジラ30作品目、令和で最初のゴジラとなるメモリアルな作品だった。国内では、23年公開の実写映画としては唯一、興収60億円を突破、北米でも大ヒットとなり、全世界興収160億円を突破している。 VFX、CGを担当したのは、日本を代表する映像制作プロダクション「白組」(1974年創業)。これまで、「ジュブナイル」「リターナー」「ALWAYS 三丁目の夕日」「STAND BY ME ドラえもん」「アルキメデスの大戦」など山崎監督作品のすべてを手掛けてきた。最先端の技術と伝統技術が混在し、ハンドクラフト精神を生かして本物の映像を追求してきたプロフェッショナル集団だ。 「ゴジラ-1.0」は、白組が培ってきた技術の集大成であり、CGでは難しいと言われる水の描写、戦後の東京の街の再現性、それを壊すゴジラの恐怖を余すところなく描いたことが評価されたといえる。 最終ノミネートに残ったのは、「ザ・クリエイター/創造者」(推定製作費8000万ドル=約117億円)、「ナポレオン」(同2億ドル=約293億円)、「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE」(同2億9100万ドル=約426億円)、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」(同2億5000万ドル=約366億円)と大作ぞろい。
ストライキも影響か
最大のライバルは、VFXを駆使したハリウッド映画としては低予算と言われた「ザ・クリエイター/創造者」。「ゴジラ-1.0」の製作費は1500万ドル(約22億円)と伝えられている。ハリウッド版ゴジラも、軒並み1億5000万ドル程度はかけられており、ハリウッド大作の10分の1の予算で作られたことになる。予算規模は賞への評価には関係ないが、このローバジェットで見せた高いクオリティーも評価への一端だと言えるだろう。 もう一つの大きな要因は、全米脚本家組合(WGA)と映画俳優組合―米国テレビおよびラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)による半年に及ぶストライキの影響だ。これによって、SF大作「デューン 砂の惑星PART2」(ワーナー)、実写版「白雪姫」(ディズニー)、マーベル映画の「デッドプール3(仮題)」(ディズニー)などVFXを駆使した大作は軒並み公開延期になった。 特に、「デューン」の前作「DUNE/デューン 砂の惑星」は、第94回アカデミー賞で技術賞を中心に10部門でノミネートされ、特殊効果賞など6部門でその年の最多受賞を記録している。ストライキがなく、予定通りに公開されていれば、「ゴジラ-1.0」の強力なライバルになったことだろう。 今回の快挙は、「ゴジラ」やVFX集団「白組」が積み重ねてきた歴史の集大成といえるが、商業的、作品的な成功は今後の日本の映画界にも大きな影響を与えるだろう。山崎監督、白組のハリウッド進出、さらなる世界市場を見据えて「ゴジラ」シリーズのスケールアップに期待がかかる。
デイリー新潮編集部
新潮社