【コラム】ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド<2024年冬号>
当媒体「水先案内人」コーナーでもお馴染みのミュージカル文筆家・町田麻子さんが現地で観劇した公演のレポートと共に、最新のブロードウェイ情報をお届けするコラム。2024年冬号が到着! 『シャックド』が上演されているネダーランダー シアターの写真ほか 毎年開幕ラッシュとなる春を控え、今年も旧作のクローズと新作のオープンの情報が入り乱れている冬のブロードウェイ。今シーズンは特にミュージカルが豊作で、1回の渡航ではとても押さえきれない数の開幕が予定されている。そんななかで今号は本連載の初心に立ち返り、現在上演中&間もなく開幕予定の全ミュージカルを後半でリストアップ、そして前半では、リストにある作品のうち私が直近の渡航で観てきたものを少し詳しめにご紹介。とはいえ前号で白状した通り、「直近」=昨年4月に観てきた作品は既にほとんどが取り上げ済みまたはクローズ済みなので、ちょっとしたズルを交えてお届けしよう。
■間もなくクローズ! 抱腹絶倒コメディ『シャックド』 残念ながら今月半ばでのクローズが発表されてしまった、昨年のトニー賞作品賞ノミネート作。とうもろこし畑が広がる田舎町で結婚を控えていた主人公カップルが、とうもろこしが急に腐るという謎現象に直面してひとまず結婚を取りやめ、ヒロインが問題解決のために向かったフロリダで出会った詐欺師をとうもろこしの専門家と勘違いし、町に連れて帰ってきて婚約者よりもそっちを好きになってしまう……というぶっ飛んだ粗筋から分かる通り、それはもう抱腹絶倒コメディとしか言い表しようのない作品で、コメディの英語は難しいので正直、観光客向きではないかもしれない。だが、何でもかんでもミュージカルのネタにしてしまう凄さ、そして日本では考えられない観客の大大大爆笑ぶり、というブロードウェイの二大特徴(?)を肌で味わうには最適につき、味わいたければ急ぎ渡航されたし! ■読み飛ばし推奨!? ネタバレ回避が正解の『&ジュリエット』 実はまだウエストエンドでしか観ていないのだが、きっと大きくは変わっていないと思うので、ネタ少なめの今紹介してしまおう(ちょっとしたズル)。バックストリート・ボーイズやブリトニー・スピアーズらの楽曲を手掛けてきたプロデューサー、マックス・マーティンのヒット曲をちりばめたジュークボックスミュージカルで、音楽が耳馴染み良く楽しいのもさることながら、とにかくストーリーが衝撃的に面白い! 知らずに観たほうがより楽しめること間違いなしなので観劇予定のある方は読み飛ばしていただきたいのだが、「ロミオとジュリエット」の結末に納得のいかないシェイクスピアの妻アンが夫(=沙翁本人)を巻き込み、ジュリエットは実は生きていたとの設定で続きを書いていくという展開だ。 死ななかったジュリエットはパリへと旅立ち、利害関係が一致した貴族と結婚しようとするものの、実はまだロミオのことが好きで、貴族はジュリエットのノンバイナリーな友達のことが気になっていて……と色々あった一幕の最後、実はロミオも生きていた! となった時にはあまりの面白さに開いた口が本当に塞がらないという初めての経験をした。そして二幕、アンに鼓舞されて自分の意志に目覚めたジュリエットがケイティ・ペリーの《Roar》を力強く歌い踊るクライマックスは、音楽、装置、衣裳、照明、振付、紙吹雪などひっくるめてミュージカル史に残る名シーン。ぜひともいつかブロードウェイで再見したい。 ■番外編:ミュージアム・オブ・ブロードウェイ ズルをした分、オマケにもう一本。といっても作品ではないのだが、2022年末に開館した新観光スポット、ミュージアム・オブ・ブロードウェイに行ってきたので軽くレポートを。ブロードウェイの歴史が学べる映像や解説パネルはもちろん、有名作品のセット模型や実際の衣裳と小道具、そして自分もその一部となって出演者気分が味わえる上に撮影まで可能な名作の名場面の再現セットなど、ビルの3フロア分にオタク心をくすぐる展示物が詰まった体験型ミュージアムだ。さらには劇作家や作曲家のインタビュー映像ゾーンまであって、オタクのみならずクリエイター志望者も楽しめそう。劇場街にあるため、観劇の合間に訪れるスポットとしてはかなりオススメなのだが……入場料が50ドル前後というのは、ちょっと割高かもしれない。