「残念な企業」を脱して株価急騰、大日本印刷のアクティビスト対応はどこが秀逸だったのか?
■ 「経営者の振る舞い」がアクティビストを遠ざける力になる ――著書では、アクティビズム(株主行動主義)への処方箋として「古典的アクティビズム」と「現代アクティビズム」について解説しています。それぞれのアプローチにはどのような特徴があり、どのような違いがあるのでしょうか。 手島 一言で説明すると、2つのアプローチでは「アクティビズムのステージ」が違います。「古典的アクティビズム」は入門編となるファーストステージ、「現代アクティビズム」は応用編でありセカンドステージと言えます。 古典的アクティビズムは、投資家がキャッシュリッチな企業に対して行動を起こして、多額の株主還元を促すことが一般的なセオリーです。一方で現代アクティビズムは、株主還元の強化に加え、投資家が経営や事業戦略に関する要求まで行います。 なお、海外において古典的アクティビズムというと、数十年前に議論し尽くされた過去の話です。大日本印刷のケースに見られるような古典的アクティビズムについて、米国で議論されることはまずありません。これは日本のアクティビズムが遅れていると言うよりも、日本企業の経営そのものが遅れているということです。 例えば、日本企業の経営者と「今後、株主還元を増やすべきではないか」と議論をすると、多くの経営者は「短期的な利益を求める株主には応じられない」と反論します。しかし、そのような議論が必要となるのは、残念な経営をすることで自社を「超割安の企業」にしてしまっていることが原因です。 アクティビストを近寄らせたくなければ、まずは経営者自身の振る舞いを反省し、経営者自身がアクティビストの思考を学ぶことが大切です。
三上 佳大