バイト代は就活に…夜行バスで地方と東京を何度も往復 交通費を出す企業には「好感」
早朝の東京・新宿で夜行バスから降り、近くのスパでシャワーを浴びてスーツに着替え、メイクして前髪をスプレーで固め、コインロッカーに荷物を入れて…。2019年に中国地方の大学を卒業した女性(27)は、就活では特に東京との往復が大変だったといいます。「交通費が出ると〝人として見てくれているんだな〟と感じました」と振り返ります。(withnews編集部・水野梓) 【画像】ES送る封筒に書いた「want you」 就活で知った〝ルール〟
学芸員を目指していたけれど
四国地方出身の女性は、中国地方の大学で人文科学を専攻していました。 「博物館の学芸員になれたらいいな、と思って大学に進みました。でも、就職はかなりの狭き門で、なかなかポストが空かないことに気づきました」といいます。 「研究は楽しい一方で、実学分野に比べて研究費も少なかったんです。『先細りの研究を志すより経済的に自立する方が優先かな』と思って一般企業に就職することを選びました」 博物館や映画館などが充実している東京や大阪などの大都市で働きたいと、大学3年生の夏ごろから就活を意識し始めましたが、フィールドワーク実習のシーズンと重なって、中長期のインターンなどには参加できませんでした。 だからこそ、「都市部に住んでいる学生や、インターンに取り組んでいる学生には『勝てないな』と思っていました」と話します。 「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)に研究はありましたが、『専門的すぎて一般企業で就活するにはカードとして弱い』と思って。競争率の高い有名企業は最初から応募しませんでした」
1泊2日で4社の企業説明会
就活が忙しくなったのは、説明会や面接などが解禁になった翌年の3月1日から。 「就活プラットフォームに掲載された無限にある企業の中から、勤務地や年間休日数にチェックを入れて絞り込みました」といいます。 コロナ禍前だったこともあり、ほとんどの企業がオンライン説明会などは実施していませんでした。 「東京に1泊すれば4社は説明会を聞きにいける…という感じで、さまざまな企業の説明会のスケジュールを、パズルのようにはめ込みました。企業によっては説明会と同じ日に続けて1次選考をやるところもあったので、現地に行かないと始まらなかったんです」と話します。 バイト代を就活の交通・宿泊費などにあてていたため、いかに出費をおさえるかが大切だったといいます。 スーツなど就活セット一式を抱えて、普段着で夜行バスに乗車。翌早朝は東京・新宿で降りると、近くのスパでシャワーを浴びてスーツに着替え、メイクして前髪をスプレーで固め、コインロッカーに荷物を押し込んで…。 交通費1000円を出してくれる企業もあったといいますが、ほとんどは持ち出しでした。 多い時には週3回ほど東京を行き来することもあり、負担は大きかったといいます。 「最終面接は往復の新幹線代を出してくれるところもありました。そういう企業は、『こちらを人として見てくれているんだなぁ』と好意的に感じましたね」と振り返ります。 一方で、「友達のなかには、奨学金を借りていたり実家にお金を入れたりしていて、そもそも地元での就職しか考えられないという子もいました。親からの仕送りがあってバイト代を就活にあてられた自分はかなり恵まれていました」と話します。