中国・全人代から見える習近平政権の硬直性をウオッチャーが解説
習近平体制を象徴するいまの全人代
だがここ数年、全人代開幕当日の各新聞、放送とも、どこも事前に内容を報じていない。いわば特ダネを出せないでいる。実は、このことは今日の習近平体制を象徴しているように思える。 一つは、統制、管理が格段に強化されて、情報が事前に外部に出ないような仕組みになったのだろう。もう一つは、このような情報入手の方法が、法律に触れる可能性が強まったことだ。仮に、政府活動報告の内容を、事前に手に入れたら、「機密を不正に取得した」と罰せられるかもしれない。だから、今の習近平体制を反映しているようにも思えてしまう。 今年の全人代で、開幕前からニュースになったことがある。これまでは毎年、首相が行ってきた内外記者会見を、今年からは「やらない」という。開幕前の事前説明会で、運営事務局は突然、こう宣言した。 “今年は閉幕後、首相の会見は開かない。特別な事情がなければ来年以降も行わない。” 首相会見をやめた理由はこうだ。 “全人代開会中、外交や経済、民生について記者会見を開く。取材の機会はさまざまある。” 今年の全人代の会期は7日間。来週の月曜日11日に閉幕する。これまでなら、閉会後に、首相が別に場を設けて、国内外の記者を集めて、さまざまな質問に答えるのが恒例だった。もちろん、その記者会見の進行役が指名するメディアは、事前にほぼ決まっている。国内の国営メディアは、クエスチョン・アンド・アンサーは用意されたものだ。一方、外国メディアも、外務省から事前に選ばれ、質問したい内容も事前に求められる。 ただし、メディアが中国の首相に直接、質問できる場面だった。首相が、政策の至らない点を反省したり、希望や抱負を述べたりすることもあった。同時に、時の首相の「人となり」、「ああ、こういうタイプの人物なのか」などの一面が伝わってくる場面でもあった。 それが、ここ数年は、海外へ訪問した場合でも、中国の首脳はメディアを入れて会見に応じるケースは皆無。その意味では、全人代での首相会見は、年に1回という、貴重な機会だった。それがなくなった。しかも、今年だけではなく、当面やらない、と数年先についても通告した。