「光る君へ」まひろの父為時役・岸谷五朗「できる娘を持った誇らしさと寂しさがある」 吉高の凄みは「目」
俳優の岸谷五朗(60)が吉高由里子主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8:00)で主人公の父・藤原為時を好演している。官職には恵まれないが、文学に秀でた真面目で実直なキャラクター。まひろが文学の才能を開花させるきっかけとなる。岸谷はクランクアップ直前にスポニチのインタビューに応じ、今作への思いをたっぷり語った。 <※以下、ネタバレ有> 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。 クランクアップを直前に控えた岸谷は「うれしい~」とにっこり。主人公に影響を与える役どころを演じ切った安堵(あんど)をにじませた。「過去に出演させていただいた大河は必ず自分の死で終わる。でも為時はお父さんとしてまひろを見守っていきます。なかなかこういう作品に出会うことはない」と充実感をのぞかせた。 為時は文学をこよなく愛する男。まひろに文学との出会いを与える。しかし、為時は娘のまひろに才があることを手放しでは喜ばず、「お前が男子(おのこ)であれば」と言い続ける。為時はまひろを文学に目覚めさせたことを後悔する。岸谷は「現代の親も同じだと思う。例えば、オリンピック選手の父親は“この道が正しかっただろうか”と迷うことが絶対にあると思う。為時には文学に目覚めさせてしまった責務がある。平安時代の女性のもっと“普通の”幸せな道があると思ったんじゃないかな」と親心を語った。 そんな親子関係に変化が生じたのが第32話「誰がために書く」(8月25日)。為時は宮中に出仕するまひろに向かって涙ぐみながら「お前が女子(おなご)であってよかった」と伝えた。女性であるがゆえにもどかしい思いをしてきたまひろにとって大きな大きな一言だった。このシーンは多くの視聴者の胸を熱くさせた。 岸谷は「大石さんの本当に素敵なセリフですよね」と、しみじみ語った。「親がわがままを通そうとした時に、子供はいつの世もその道を外れていく。でも外れていった先に幸せや彼女の生き様がリンクしたのだと思います」。まひろの「学問が私を不幸にしたことはございませぬ」というセリフは為時にとって最大の褒め言葉だった。「彼女の才能が父親を超えていった。育てている最中は色々あったけど、千年以上の時を超えて読まれる本を書く娘に育ったことを為時は天国で大喜びしていると思います」と笑顔を浮かべた。 和歌や漢詩に通じる為時は、娘が書いた「源氏物語」をどう読んだのだろうか。岸谷は「“こんな話が書けるということはこういう経験をしてきたの!?”というドキドキと不安がある。文学としてはもちろん認めるけど、面白ければ面白いほど不安な気持ちになる。時間が助けてくれて手放しで喜べるようになっていく」と複雑な心境を打ち明けた。 続けて、「すごく遠くに行ってしまった感覚がある。できる娘を持った誇らしさと寂しさがある」と吐露。「ふと、奥さんが生きていたら2人でお酒でも飲みながらまひろの話しをしていたんだろうなと想像する時がありました」と、第1話で亡くなった妻・ちやは(国仲涼子)に思いを馳せた。 娘役の吉高は所属事務所「アミューズ」の後輩。「まだ活躍していない時から知っている。俺の中では本当に可愛らしい後輩」と、愛情いっぱいに語った。古くから交流がある一方で、面と向かって芝居をするのは今作が初めて。「第2話で初めて目を見て芝居をした。目を見た時に、“こいつの役者力はこれだ!こいつの役者の深さはここにあるんだ!”とすごく思いました」と感心した。さらに、「緊張して大河ドラマに臨む若手の俳優がたくさんいる中、吉高は主役として周りを緊張させない。それが彼女の優しさ」と褒め倒した。続けて「本人には言っていません。調子に乗ると嫌なので」とポツリ。本物の親子のような厳しくも愛情にあふれた表情を浮かべた。