伊勢谷友介との掛け合いは「必要以上に焚きつけさせてもらいました」若葉竜也が明かす『ペナルティループ』
●かなり鋭利で面白い「カルト映画」の誕生
――劇中の見せ場のひとつといえるのが、伊勢谷友介さん演じる岩森の恋人を殺めた溝口との掛け合いです。 伊勢谷さんとは、今までお会いしたことがなかったんですよ。久々の復帰作ということで、エンジンをかけてもらうため、「これって、どう思います?」って聞くことで、必要以上に焚きつけさせてもらいました。 これは全スタッフに向けてもそうで、監督がワンマンだったり、「今日のスケジュールを消化できればいい」と思うような現場にはしたくなかったんですよ。なので、座長というか主演の立場から、みんなが自由に発言できる空間を作りました。それによって、一時間現場が止まったりもするんですが、その方が絶対、面白い映画ができると思うんですよね。何度も何度も、伊勢谷さんを殺さなきゃいけないのはしんどかったですけど(笑) ――本作を「カルト映画」と認定されたそうですが、その理由は? 観終わった後、塚本晋也監督の『鉄男』を初めて観たときの感覚になりつつ、「普通の日本映画が大好きな方に、到底受け入れられるものではないな」と思ったんですよ(笑)。 でも、自分が読んだ台本を遥かに超えて、かなり鋭利で面白いものに仕上がっていたんです。上から目線じゃないですけれど、これだけ娯楽が増えている時代に、今までない手触りだったり、毛並みを持った『ペナルティループ』という作品が投げ込まれたときに、お客さんがどういう反応を示すんだろうっていう興味は、すごくあります。
●これからは、もう少し間口を広げなきゃいけない
――以前のインタビューで「これからも粛々と戦っていきたい」というコメントを残されていましたが、近年2年半の公開作を振り返っていかがでしたか? 別に「頑張ったな」とは思わないですけど、世間に惑わされず、ブレずに、自分がやりたいと思う作品だけに参加できているっていう意識はあります。それを続けていかなきゃいけないし、そのためにはハメを外してはいけないと思うし、粛々とやらなきゃいけないと思いますよね。 ただ、大きく変わったのは、やっぱり独立して、新しい事務所を作ったことで、背負うものは出来ました。綺麗事だけでは無理なので、そういう意味では、もう少し間口を広げなきゃいけない意識も芽生え始めています。 ――ほかに、コロナ禍などでの心境の変化はありますか? コロナ禍で閉館が相次ぐ「ミニシアターを残そう」っていう俳優の動画がたくさんアップされたとき、ちょっと疑問を覚えたんです。本気で考えている人もいるかもしれないけれど、実際に俳優が映画の宣伝会議にも行ってないし、ビジュアルがどうなっているのか、誰が予告編作っているかも分かってないんですよ。それを全部すっ飛ばして、「ミニシアターを残そう」って言うのって、ちょっと虫が良すぎないか? って。 「役者がそこまで突っ込むことじゃない」っていう概念もあるだろうし、生意気だと思われたくないし、嫌われたくないのは分かるけれど、自分のデメリットは負いたくないけど、その活動に参加するっていうのは、よく分からなかった。スタッフ、監督、役者が納得できる作品を自信を持って作ったうえで、「ミニシアターに来てくれ」って言いたいと思いましたから。