JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える(24)=チームプレーの精神伝えたい=モジ・ダス・クルーゼス文化協会 神浩幸
サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス文化協会所属、野球隊員にとして活動中の神浩幸です。モジ・ダス・クルーゼス文化協会(以下文協)初めてのスポーツ隊員として2023年3月に着任しました。 モジ・ダス・クルーゼス市はサンパウロから東へ約40キロ、人口約43万人の大きな街(私の住んでいる日本の街より人口が遙かに多い)です。 モジ・ダス・クルーゼス市の歴史は古く1560年に始まったと記されています。日本人の移住は、笠戸丸の到着11年後の1919年から始まり、勤勉な日本人は野菜や果物を栽培し、一時は人口の30%を占めるようになりました。 毎年4月に開催される秋祭りは37回を数え、毎年10万人を超える来場者があります。 街中を歩けば必ず日系の人とすれ違ったりします。挨拶も日本語で交わされ、会話の中に「今年の紅白歌合戦観る?」なんて会話も聞きました。 それだけ日系人が集まれば子ども達の野球も始まります。全伯大会での優勝を含め大活躍、またMLB・NPB・日本の社会人野球への選手の輩出で、日本人移住地にその名を轟かせました。 しかし、1990年代の出稼ぎブームで、日系人の人口が少なくなると、野球熱も冷め、かつての勢いもなくなり、野球部の存続自体が危ぶまれました。 そんな中、出稼ぎ世代の人たちの子どもが、学童期を迎え、自分の子どもにも野球をやらせたい、そんな機運が高まり、指導者を求めることになり、私がJICAボランティアとして派遣されるに至りました。
文協野球部は現在3つのカテゴリー(T―bol(U―8)、Pre―infantil(U―10)、Infantil(U―12))で活動しています。 また昨年5月から始まったプロジェクト(文協グランド近隣の学童に対する野球普及活動)もあります。 月曜日を除く平日の昼間、火水木の夜間、土日は大会参加等、一生懸命活動をしていますが、なかなか結果が出ずに忍耐の日々が続いています。 子どもたちはとても明るく前向きに活動をしています。日系人の比率が徐々に少なくなってきていますが、これは時代を反映しています。現在でも挨拶は日本語で行われていますが、これをいつまで続けるのか、続けていけるのか、日系の人たちはどう考えているのか、選手に日系人もいなくなる日も来るだろう。それでも「お願いします」「ありがとうございました」の挨拶で練習や試合が始まることを、一人の日本人として願っています。 赴任当初の指導の重点目標は野球の基本技術、とりわけキャッチボールの重要性を柱に活動してきました。その精神は指導者や選手にも浸透し、それなりの成果が出ていると確信しています。 任期は残すところ約3ヶ月となり、私自身が感じている一番の課題は、野球人口(部員)を増やすことです。これこそが最も重要な課題だと感じています。また約2年間の活動の中で感じたことはチーム一丸となってゲームに臨むという意識を高めること、選手個々の能力を高めることはもちろん重要ですが、それにはやはり限界があります。一人一人の力は弱くても、全員の力を結集して戦っていくチームプレーの精神、これこそが日本人が得意なところです。指導者や選手に、この精神を残りの任期のなかで少しでも伝えられるように努力したいと思います。最後に、文協の方々、各地域の野球関係者の方々には大変お世話になり、いつも本当にありがとうございます。
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