10月に読みたい3冊。今月のGINZA編集部レコメンド!
GINZA編集部が、新刊3冊をレビュー!今月何を読もうか迷ったら、こんな本はいかがでしょう?
『わたしの知る花』町田そのこ
高校生の安珠はある日、公園で絵を描く不思議な雰囲気の男性と出会う。彼・葛城と祖母が昔なじみだと知った安珠は、友人たちとともに葛城の過去を調べ始める。彼の絵の謎、ある人物が遺した日記、そして祖母の秘密……「男は逞しく、女は従順に」を押しつけられていた世代と、表面上は選択肢の多い今を生きる10代を対比させながら、それぞれが抱えている想いに光を当てた群像劇。物語をそっと彩る花々が美しい。
『ガチョウの本』イーユン・リー
フランスの田舎に住む13歳のアニエスは作家デビューし神童と呼ばれるようになる。本当の作者は親友のファビエンヌ。二人一組の気軽な遊びだったはずの企みはしかし、彼女たちを思いがけない方向に導いてしまう。ファビエンヌがなぜ「ゲーム」をしようとしたのか、10数年後に理解するアニエス。愛らしいタイトルとは裏腹の、鈍痛のような苦みが胸を離れない。2023年度のペン/フォークナー賞受賞の長編。
『酔わせる映画 ヴァカンスの朝はシードルで始まる』月永理絵
気鋭のライターが新旧国内外の200本を「酒」「りんご」「食」のテーマで紹介したコラム集。爽やかで生き生きとした文章がいつか観た映画を想起させ、いつか観たい作品を心にメモさせる。かじられる、剝かれる、調理される、贈られるりんごの「役目」を論じた第2章は特に「こんな視点もあったのか」と新鮮な驚きを感じさせてくれる。巻末の索引も便利。 ●Recommender_北村浩子 今月心に残った文。《ときには一人の人間の死が、別の人間を釈放する許可証になることがある》(『ガチョウの本』より)
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