【漫画家インタビュー】『東京最低最悪最高!』鳥トマトが語る、"面白さ"のキモとは? 「人間は元々ヤバい人が大好き」
コロッセオと同じ? 令和の鬼才・鳥トマトのSNS論
▪️コロッセオと同じ? 令和の鬼才・鳥トマトのSNS論 ーー話は変わりますが、昨今は作家さんご自身のSNSでの宣伝力が大事といった風潮もあるかと思います。この風潮についてはどうお考えですか? 鳥:実は、SNSのバズと漫画の売上には皆さんが思うほど相関性がないんですよ…。フォロワーが僕より少ないのに漫画は爆売れしている作家さんもいっぱいいらっしゃるので(悲)。そもそもSNSが宣伝として本当に役に立っているかは僕はかなり懐疑的です。 作家の宣伝力の多寡が重要になってきている、というか、単に変な人をみんないつも観たい、それが盛り上がっているように見える、ということではないかな、と思っています。 ーーものすごく俯瞰的に捉えていらっしゃいますね。 鳥:これは今に始まった話ではなくて、見せ物小屋とか、大道芸人とか、中世の処刑ショーとか、古くはコロッセオの殺し合いとか、人間って元々、①奇妙なことをしてる②ヤバい人間が③恥をかきながら必死で頑張っているところが昔から大好きですよね。 なのでSNSも場所がインターネットに移っただけで、本質は何も変わらなくて、「①奇妙なことをしてる②ヤバい人間が③恥をかきながら必死で頑張っているところを観たい人がいっぱいいる」んだろうなと思っています。 ーー非常に納得感のある分析です。鳥トマトさんはSNSでの宣伝を精力的に行っていらっしゃいますが、キツくないですか? 鳥:僕は実は本アカウントの他に、アカウントを三つ、計四つ持っていて、常に何かを呟いています。幼少期からトイレの芳香剤の裏や、街中に置いてあるチラシなどをずっと読んでいて、常に何かを読んでいないと脳みそが暇なので不安で、それと同じ要領でSNSをずっと見ています。SNSには変な情報もいっぱいあると思うのですが、トイレの芳香剤よりは人の感情とか、有意義なことが書いてあることが多いので好きです。 ーーSNSに向いている性格ということでしょうか。 鳥:自分は「SNSでビュー数を上げなきゃ…」と思って頑張っているというよりは、「ずっとやりたい放題呟き続けてたらこうなってしまった」という形に近いです。SNSと漫画がなかったら、別の形で奇行に走っていた可能性もあるので、SNSと漫画があって良かったなと思っています。なので、「SNS苦手だけど広報頑張らなきゃ…」と感じる人は、そもそもSNSやらなくていいと思います。 あと、最近漫画の宣伝をしたくて音楽活動も始めたのですが、これも「恥をかきながら必死で頑張る」の一環です。やっぱり、内実がないものを宣伝することはできないので、毎日コツコツ恥をかく、あと、頑張ってるところをお見せする、これしかできないのでやっている、という感じです。 ーー「小さなことからコツコツと」は真理と言えそうですね。 鳥:逆にいうと、①奇妙なことをして②ヤバい人間になって③恥をかきながら必死で頑張る、この三つが揃っていさえずれば、とりあえず、誰かに見てもらうことはできるみたいなので、自らが奇妙で、このままでは人生ヤバいかもしれない!という自覚がある人は、恥をかきながら頑張るしかないのではないでしょうか。これはSNSに限らないと思います。 自らが奇妙でもないし、ヤバくもなさそう、という自覚がある方はどうか平和に幸せに生きていって欲しいです。人生の意地悪な面白味は僕がご提供いたしますので、僕の漫画を買ってください! ーーありがとうございました。 ©鳥トマト/小学館・ビッグコミックス
リアルサウンド ブック編集部