藤本タツキが劇場アニメ版『ルックバック』に太鼓判!「自分が原作を書いたのに、自分の絵より上手いのが悔しかった(笑)」
「チェンソーマン」の藤本タツキが2021年7月にコミック配信サイト「少年ジャンプ+」で発表するや、初日だけで閲覧数250万以上を記録するなど大反響を巻き起こした同名漫画を、河合優実と吉田美月喜のダブル主演で劇場アニメ化した『ルックバック』(6月28日公開)。このたび本作から、藤本のインタビューと新場面写真が解禁された。 【写真を見る】原作者・藤本タツキが“仕掛け”や“ディテール”に驚嘆!「作り込まれていて感動しました」 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(09)や『風立ちぬ』(13)などに主要スタッフとして携わってきた押山清高が監督・脚本・キャラクターデザインを務めた本作は、ひたむきに漫画を作り続ける2人の少女を描いた物語。学年新聞で4コマ漫画を掲載している小学4年生の藤野。クラスメートからは絶賛されていたが、ある日、不登校の同級生・京本の4コマを載せたいと先生から告げられる。やがて漫画へのひたむきな思いでつながる2人だったが、ある日すべててを打ち砕く出来事が起き…。 このたび解禁された藤本のオフィシャルインタビューでは、自身の学生時代の経験を反映させてこの物語を生みだした経緯や、アニメーション作品として生まれ変わった感想などが語られていく。「押山監督のすさまじい熱量に、『この人は命を懸けて描いているんだ!』と感じましたし、自分の絵より上手いのが悔しかった(笑)」と語る藤本は「仕掛けがいっぱいあり、細かいディテールまですごい。作り込まれて感動しました」と、アニメ版の完成度の高さを大絶賛。 さらにダブル主演の河合と吉田の声についても「2人ともすごく良かったです!落ち着きがありつつアニメらしさもある」と太鼓判。また併せて解禁された場面写真は、漫画の執筆に打ちこむ藤野と京本の姿など全部で4枚。アニメーションとして新たな命を吹き込まれた、胸を突き刺すような青春物語を、是非とも劇場でその目に焼き付けてほしい。 <藤本タツキ オフィシャルインタビュー> ーー原作はどのような構想を経て描かれたのでしょうか? 「もともと読切をたくさん描きたいと思っていて、普段から『こういうのを描きたい』というアイデアを貯めていて、『ルックバック』はそのひとつでした。『さよなら絵梨』などもありましたが、具体的な内容が決まっていたのが『ルックバック』だったので、『チェンソーマン』第一部のあとに描く優先順位は1位にしていました。 内容に関しては、たまたま読んだ本から、『死と和解できるのは創造の中だけだ』というようなセリフがあって、すごくいいセリフだと思ったんですよね。原本だと、単なる皮肉なのか、さらっと流されるようなセリフだったんですけど、自分にはすごく刺さって。『チェンソーマン』や『ファイアパンチ』も含めて、自分の作品全部に一貫していることだなと思いました。なので、それを軸にしようというイメージがありましたね」 ーー本作は、藤本先生の実体験が反映されているとのことですが、具体的にどういった部分でしょうか? 「すごく絵の上手い同い年の相手がいると、すごく気にしてしまうんですよ。僕は中学生のころ、イラスト投稿サイトに年齢が記入されている欄があったので、同年代で上手い人のリストを作っていました。『この人、同い年なのに、どうやってここまで上手くなったんだろう?』と。そのサイトで見つけた作家さんにコンタクトを取って、『どんな参考書を使っているんですか?』とか聞いたりしていました。なかにはすごく丁寧に教えてくださる方もいて、美術高校の話も聞きましたね。『うちの近所にはそんな学校ないよ!ずるい!』と思ったりして(笑)。自分も美術高校に通いたかったと、すごく嫉妬していました」 ーー押山監督の描くアニメーションの世界は藤本先生の目にどう映りましたか? 「押山監督のすさまじい熱量に『この人は命を懸けて描いているんだ!』と感じました。そして、自分が原作を描いたのに、自分の絵より上手いのが悔しかった(笑)。それ以外にも『自分にはこんなことできなかった』という仕掛けがいっぱいありました。例えば藤野が京本の部屋の前に来た時、4コマを落とした床のタイルの色が、一枚一枚きちんと違うんですよ。そこに『うわぁ!』と。街へのおでかけで、藤野に引っ張られる京本の腕の勢いのあるパースもそうです。ほかにも田舎の雰囲気が僕の地元の情景そのままだったり、細かいディテールまですごい。こういう『ここは自分しか気づかないだろう』みたいな部分まで作り込まれていて感動しました」 ーー河合優実さん、吉田美月喜さんの声を聞いていかがでしたか? 「2人ともすごく良かったです!ジブリ作品みたいな抑え目な雰囲気で、落ち着きがありつつアニメらしさもあって、世間に広く受け入れられるんじゃないかと思います」 ーー「藤野ちゃんは何で描いてるの?」というセリフがありますが、先生が描いている理由はありますか? 「20代前半は奨学金を返すため、以降は楽しいから描いています!」 ーー楽しみにしている観客の皆様へ 「監督の才能と熱意が伝わってくれれば幸いです!僕も一観客として楽しみです!」 文/久保田 和馬