増車を選択したオーナー! 1971年式と1972年式、2台のコスモスポーツ
同じクルマを2台所有する……。一般的には理解しがたいが熱心な旧車ファンにしてみればうらやましい限りだ。持論を貫き2台のコスモスポーツを所有するオーナーに迫る。 【画像23枚】コスモスポーツのほかにポルシェターボやビート、RX-7などを乗り継いできたスポーツカー好きのオーナー。2台のコスモスポーツと 【2台のマツダ コスモスポーツと暮らす】 1960年代初頭、マツダ(当時は東洋工業)は経営における大方針として軽自動車から高級車までをフルラインナップする「ピラミッド・ビジョン」を掲げる。この構想を具現化すべく発売されたR360クーペ、キャロルの販売が好調に推移。 さらにラインナップを増やして、第2段階に入ろうとした矢先に思わぬ事態が発生した。自動車3グループ化構想や特定産業振興法(特振法)によって中規模自動車メーカーに吸収合併の危機が迫ってきたのだ。 トヨタや日産といった大メーカーに吸収されないためにも状況を打開するクルマの開発が急務であったマツダは、独NSU社が実用化したロータリーエンジン搭載量産車開発という大義名分を掲げ、大規模な設備投資を行った。そして当時設計部次長であった山本健一さんを部長に据えて、ロータリーエンジン開発部を設立し、本格的な開発に着手。 山本さんは、NSU社では理論的解析ができていないことに着目し、それをスタートに設定して研究を開始。この方針は見事に当たり、ロータリーエンジンの欠陥を克服して、第11回東京モーターショーでロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツを公開。 そこからさらに2年の開発、そして数多くのテストを重ねて、1967年5月に世界初の2ローター・ロータリーエンジン搭載量産車としてコスモスポーツを発売することになった。 1968年7月には大口を開けたグリルが特徴的な後期型にマイナーチェンジ。ホイールベースやトレッドが拡大され、トランスミッションが5速化されるなど、マイナーチェンジでありながらモデルチェンジに近いほどの改変が行われ、そのスタイルは変わらないものの大きな変ぼうをとげ、より高性能に、快適なクルマへと生まれ変わった。 前期型の発売当時価格は158万円とかなりの高額であったが、量産することでロータリーエンジン自体のコストを下げることに成功。その後、ファミリア、カペラなどの戦略車に搭載。マツダを国内はもちろん世界的な企業へと押し上げ、数多くのロータリーファンを輩出してきたのだった。 1971年式 マツダ コスモスポーツ 全長4130mm 全幅1590mm 全高1165mm ホイールベース2350mm トレッド前/後1260/1250mm 最低地上高125mm 車両重量960kg 乗車定員2名 最高速度200km/h 登坂能力tanφ0.553 最小回転半径5.2m エンジン型式10A型 エンジン種類水冷2ローター・ロータリー 総排気量491cc×2 圧縮比9.4:1 最高出力128ps/7000rpm 最大トルク14.2kg-m/5000rpm 変速比1速3.379/2速2.077/3速1.390/4速1.000/5速0.841/後退3.389 最終減速比4.111 燃料タンク容量57L ステアリング形式ラック&ピニオン サスペンション前/後独立懸架筒型複動オイルダンパー・コイルバネ/筒型複動オイルダンパー半楕円形板バネ ブレーキ前/後ディスク/リーディングトレーリング タイヤ前後とも155HR15ラジアル 発売当時価格158万円 初出:ノスタルジックヒーロー 2018年 12月号 Vol.190 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部