突然中止となったクエンティン・タランティーノ監督の次回作には、過去作品のキャラクターを登場させる案もあったようだ
突然中止となったクエンティン・タランティーノ監督の次回作には、過去作品のキャラクターを登場させる案もあったようだ
クエンティン・タランティーノ監督の引退作とされていた映画『The Movie Critic(原題)』は先週、突然の製作中止が報道されたが、この企画についてさらなる情報が明らかになった。 The Hollywood Reporterは、この映画の進捗状況や内容、出演の可能性があったキャスト、そして企画が頓挫した原因について興味深い詳細を伝えている。記事では、タランティーノが純粋にクリエイティブな理由から方針転換を図ったことが綴られており、これはDeadlineによる先週の報道と一致する。 まず、配給スタジオは正式に決まっていなかったものの、2019年に公開された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の成功を受け、『The Movie Critic』でもソニー・ピクチャーズがタランティーノと組むことに「強く賛成」していたという。記事によれば、プロジェクトの中止は双方の関係を悪化させておらず、タランティーノが自身の引退作に何を選ぼうとも、ソニーは依然として全面的にサポートを行う構えであるそうだ。 しかし、今回のプロジェクトを中止に追い込んだのは、「全盛期の状態で退く」という理想から来るプレッシャーそのものだった可能性もあるようだ。タランティーノはこれまでに何度も「10作目を撮ったら監督を引退する」と公言しており(『キル・ビル』は二部作であるが、本人はこれを1本の映画とみなしている)、最後の監督作に対する期待を高めてきた。The Hollywood Reporterの取材に応じた情報筋は、タランティーノが『The Movie Critic』を引退作としなかった理由をはっきりさせておらず、「ほかのアイデアにより強く興味を抱くようになった」とのみ語っている。 タランティーノのお別れユニバース? タランティーノが『The Movie Critic』の脚本に何度も修正を加えてきたことはすでに知られている。今回の報道では、アイデアのうちひとつは、自身の過去作に登場したキャストとキャラクターを作中に盛り込むというものだったと伝えられた。このことから、『The Movie Critic』はある時点で『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のスピンオフに近い位置づけとなっており、ブラッド・ピットが演じたクリフ・ブースが再登場することになっていたそうだ。また別の案としては、キャラクターたちが映画館で若い映画監督と交流するというものもあった。この若い映画監督というのは、10代の頃にポルノ映画館で働いていたタランティーノの分身だと考えられる。 『The Movie Critic』はキャスティングの話題にも注目が集まり、トム・クルーズが出演するのではないかとの噂もあった。しかしThe Hollywood Reporterによれば、クルーズとタランティーノは、役の話し合いのために会ってすらいなかったとのことだ。一方、オリヴィア・ワイルドは今年に入ってからタランティーノと会ったようだが、このミーティングが何についてのものだったかはわかっていない。 タランティーノの過去の発言によると、『The Movie Critic』は実在の映画批評家をモデルにした物語となるべく企図されたもので、この人物による批評は「(ラジオパーソナリティの)ハワード・スターンと(『タクシードライバー』主人公の)トラヴィス・ビックルがもしも映画批評家だったら」という人格をかけ合わせたような文章であったそうだ。 タランティーノがこれからどのような方向へ舵を切るのかは不明だ。しかし『The Movie Critic』もまた、R指定版の「スター・トレック」や「キル・ビル」第3作のように、日の目を見なかったプロジェクトのひとつとなるように思われる。 Thumbnail credit: Laurent KOFFEL/Gamma-Rapho via Getty Images
Alex Stedman