第７２期王座戦第３局に臨む藤井聡太王座=日本将棋連盟提供

　将棋の第７２期王座戦５番勝負第３局が３０日、京都市のウェスティン都ホテル京都で指され、後手の藤井聡太王座（２２）＝竜王・名人・王位・棋王・王将・棋聖との七冠＝が永瀬拓矢九段（３２）を１５６手で下して３勝０敗で棋戦２連覇、初防衛に成功した。チェスクロック使用の持ち時間５時間を両者とも使い切り、１手６０秒未満で指す１分将棋になっていた。両者の公式戦対局成績は藤井王座の１８勝７敗。タイトル戦では３度対局し、藤井王座から見て奪取１、防衛２となった。 ◆藤井聡太王座と永瀬拓矢九段の王座戦第3局夕食メニュー【写真複数】 　思い出の地で再びドラマが生まれた。この日の対局会場は昨年１０月１１日、同じ王座戦第４局が行われた場所。配色濃い最終盤に大逆転で勝利を飾り、藤井七段が３勝１敗で永瀬王座からタイトルを獲得、史上初の全八冠独占を果たした舞台だった。 　この日の対局は永瀬九段の誘導に藤井王座が応じて、今タイトル戦３局連続で互いに角を手持ちにする角換わりの戦型となった。藤井王座が８６手目、敵陣の飛車金両取りに打った角で馬をつくり、ジワリと上部から圧力をかけたが、永瀬九段の９筋を破る攻撃を「軽視していて、（序盤で２筋に回った）飛車も使えない形なので自信の持てない感じになってしまった」と藤井王座。１１２手目、先に持ち時間を使い果たし１分将棋にも突入。永瀬九段の猛攻を浴び続ける形になった。 　ネット中継のＡＩが、永瀬九段の勝利確率８０％近くを示していたが、「最後の最後に勝ちになった」と言うように一瞬の隙をついて逆襲。１４６手目に９筋に放った香車の王手に、永瀬九段が歩の合駒をしたのが逆転を導いた。藤井玉を詰ませるのに９筋に歩を使う必要があったからだ。相手のミスを招いたのは、時間のない状況で受けた相手の攻撃に対して、ことごとく的確に対応できたから。そこが藤井マジックの秘訣（ひけつ）でもある。 　八冠独占から１年、叡王位は失ったものの、その他７つのタイトルはしっかり防衛を続けている。今回の王座戦も３勝０敗のスイープで守り、１０月５、６日に第１局が行われる竜王戦も平行開催を避けることができた。今回の王座戦について「指したことのない形も試したりもしたので判断が難しかったり、印象に残る局面もあったシリーズ」と振り返った藤井王座。積み重ねた経験を土台にして、さらに進化した姿をみせてくれそうだ。