18作品が7か月連続リリース!「KADOKAWA洋画セレクション」から、4Kレストアでよみがえるアカデミー賞作品賞受賞の名作たちをピックアップ
世界的ヒット作から映画史上に残る不朽の名作、さらには近年再評価が進んでいる傑作まで、初Blu-ray化タイトルも含む、ジャンルも年代も様々な洋画18作品のBlu-ray&DVDを7か月連続で毎月リリースする「KADOKAWA洋画セレクション」が、9月27日(金)の第1弾を皮切りにスタート。 【写真を見る】アメリカン・ニューシネマの名作に、伝説の悪役を生んだ傑作も!4Kレストア版の高画質でコレクションに加えよう そのラインナップのなかから本稿では、アカデミー賞作品賞に輝いた名作3作品をピックアップ。第1弾として9月27日に発売される『真夜中のカーボーイ』(69)、11月以降に発売予定となっている『羊たちの沈黙』(91)と『プラトーン』(86)。いずれも4Kレストア版での初パッケージ化となるこれら3作品の注目ポイントを紹介していこう。 ■現代にも通じるテーマが描かれる、“アメリカン・ニューシネマ”初の作品賞受賞作 第42回アカデミー賞で作品賞と監督賞、脚色賞の3冠に輝いたジョン・シュレシンジャー監督の『真夜中のカーボーイ』は、1960年代後半から1970年代中ごろにかけて登場した、いわゆる“アメリカン・ニューシネマ”と括られる作品群のなかで初めてアカデミー賞作品賞に輝いた作品だ。 カウボーイの格好でテキサスからニューヨークへと出てきた青年ジョー(ジョン・ヴォイト)は、男娼として富を得ようとするのだが逆に金を巻き上げられ、さらにラッツォ(ダスティン・ホフマン)という男に金を騙し取られ、挙句泊まっていたホテルも追いだされてしまう。罪悪感からラッツォはジョーに協力するようになるが、そのなかでジョーはラッツォが無一文で極貧生活を送っていることを知る。泥沼から這い上がるために力を合わせる2人の間にはいつしか友情が芽生えていくのだが、すでにラッツォの体は病魔におかされていた。 ベトナム戦争の激化によって混沌とした当時のアメリカの世相を反映するように、反体制的かつ悲劇的な若者たちのドラマが数多く作られた“アメリカン・ニューシネマ”の時代。それは同時に、1930年代からハリウッドの映画界で導入されていた“ヘイズ・コード”と呼ばれる表現規制のガイドラインが完全に廃止された時代でもあった。それまでは描くことができなかった同性愛や性暴力を正面から描き、また前時代のマチズモ(男性優位主義)の象徴ともいえる“カウボーイ”を通して男性の生きづらさを表現する。50年以上前の作品でありながら、そのテーマ性の深さは現代にも通じている。 『卒業』(67)で一躍注目を集めたダスティン・ホフマンと、それまで大役を演じたことのなかったほぼ新人で、いまでは“アンジェリーナ・ジョリーの父”としても知られる名優ジョン・ヴォイトは、本作の好演で共にアカデミー賞の主演男優賞にノミネート。現代でも語り継がれる様々な作品が世に放たれた“アメリカン・ニューシネマ”における、指折りの1本といえよう。 ■史上3本目の快挙を達成!伝説の悪役を生んだサイコスリラーの傑作 現在では候補枠の増加や時代の変化に伴なって是正されつつあるが、かつてはホラーやSFなどのジャンル性の強い映画はよほどの作品でないかぎりアカデミー賞とは無縁のものと思われていた。そんななかで“サイコスリラー”というジャンルに含まれながら第64回アカデミー賞で作品賞と監督賞、主演男優賞、主演女優賞、そして脚本部門(本作では脚色賞)の“BIG5”を制覇するという史上3本目の快挙を成し遂げたのが、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』。 FBI訓練生のクラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)は、バッファロー・ビルという犯人による連続猟奇殺人事件を解決するため、元精神科医で収監中の凶悪殺人犯ハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)に捜査協力を求める。しかしレクターと面会を繰り返すうちに、彼の巧みな心理術に翻弄されて過去の記憶と向き合うこととなるクラリス。そんなか、バッファロー・ビルの新たな事件が発生。さらにレクターは別の刑務所へ移送される隙をついて脱獄してしまうのである。 映画史上に残る悪役ともいわれるレクター博士は、まさに名優アンソニー・ホプキンスの一世一代の当たり役。リドリー・スコット監督が手掛けた続編『ハンニバル』(00)、前日譚を描いたブレット・ラトナー監督の『レッド・ドラゴン』(02)でもホプキンスが同役を演じているが、得体の知れない不気味さという点で本作が最も恐ろしい。先述のジャンル性の高さも相まって、取っ付きづらいものに思われがちな“アカデミー賞作品賞受賞作”のなかでも特に観やすい一本だ。 ■ベトナム戦争の狂気を描き、賛否両論を巻き起こした怪作 先に紹介した『真夜中のカーボーイ』のように、ベトナム戦争を背景にした作品は1960年代から様々作られてきたが、直接的にベトナム戦争を描いた作品が増加してくるのは戦争終結後の1970年代後半になってから。その代表的な1本が、自らもアメリカ陸軍の空挺部隊としてベトナム戦争に従軍した経験のあるオリヴァー・ストーン監督がメガホンをとり第59回アカデミー賞で作品賞、監督賞、編集賞、録音賞の4部門に輝いた『プラトーン』。 徴兵されていく同年代の若者たちの多くが貧困層であることに憤りを覚えたクリス(チャーリー・シーン)は、大学を中退してアメリカ陸軍に志願。いきなり最前線の戦闘小隊に配属されることとなる。過酷な戦場を目の当たりにするうちに、初めのころの正義感を失い、その異常さに慣れていくクリス。しかしある時、民間人の処遇をめぐって冷酷な隊長のバーンズ(トム・ベレンジャー)と、無益な殺人を否定する班長のエリアス(ウィレム・デフォー)が対立し、戦闘の最中にバーンズはエリアスを射殺。さらに熾烈な接近戦で次々と戦友たちが命を落としていくことに。 戦地ベトナムでいったいどんなことが起きていたのか、その生々しいまでの現実を描きだし、大ヒットを記録するとともに賛否両論をも巻き起こした本作。近年ウェス・アンダーソンやヨルゴス・ランティモスの作品で性格俳優として再注目を浴びているウィレム・デフォーや、のちにアカデミー賞を受賞するフォレスト・ウィテカー、そしてブレイク前のジョニー・デップなど、豪華なキャスティングにも注目だ。 ■大ヒット作から超問題作まで、多彩なラインナップが勢ぞろい! 最後に、今回の「KADOKAWA洋画セレクション」のほかのラインナップも簡単にチェックしていこう。 『真夜中のカーボーイ』と同じ第1弾でリリースされるのは、公開当時にセンセーショナルを巻き起こし、いまもなお議論の渦中にあるベルナルド・ベルトルッチ監督の問題作『ラスト・タンゴ・イン・パリ』(72)のオリジナル無修正版。10月25日(水)リリースの第2弾では、ブラッド・ピット主演の『カリフォルニア』(93)とジム・キャリー主演の『エース・ベンチュラ』(94)に加え、近年再評価の兆しが著しいリドリー・スコット監督の『テルマ&ルイーズ』(91)の4Kレストア版がBlu-ray&DVD化される。 さらに11月以降には『羊たちの沈黙』に加え、ジェームズ・キャメロン監督の大ヒット作『ターミネーター』(84)と、国内初リリースとなるスティーヴン・キング原作の傑作スリラー『ミザリー』(90)の4Kレストア版。初Blu-ray化作品としては、ロバート・レッドフォードとトム・クルーズ、メリル・ストリープが共演した『大いなる陰謀』(07)に、ローランド・エメリッヒ監督の『スターゲイト』(94)、さらには人気コメディ『メジャーリーグ』(89)と『メジャーリーグ2』(94)、リチャード・ドレイファス主演の『陽のあたる教室』(95)が控えている。 ほかにも11月以降の発売予定作品には、マイケル・マン監督とダニエル・デイ・ルイスがタッグを組んだ『ラスト・オブ・モヒカン』(92)やリメイク版ドラマシリーズも好評を博したコーエン兄弟の『ファーゴ』(96)4K版。スティーヴ・マックイーン主演の『華麗なる賭け』(68)と、4K版でのパッケージ化は初となるマーティン・スコセッシ監督&ロバート・デ・ニーロのタッグの名作『レイジング・ブル』(80)がラインナップされている。 1960年代から2000年代まで、ヒューマンドラマからアクションやSF、コメディ、ホラーなどジャンルも様々な洋画の傑作・名作18タイトルを集めた「KADOKAWA洋画セレクション」。ぜひともこの機会にコレクションに加えてみてはいかがだろうか! 文/久保田 和馬