ドーナツ・ピーナツ(2)中田カウス師匠の教え胸に今年もM―1へ「一回漫才でバチンと目立っておきたい」
【ドーナツ・ピーナツインタビュー(2)】 ◆「顔がかわいい」ピーナツ「北九ではジャマだった」 【写真】師匠は中田カウスの「ドーナツ・ピーナツ」(左がピーナツ) ―大阪にもカベポスターやダブルヒガシといった活躍している同期は多いですね。 ピ「でも、ぼくら東京やったから全然からんでなかったんです。仲良くなったのも劇場所属になる4年目の終わりから5年目にかけてですから。同期感はあるんですけどライバル感があんまりなくて。だから先に行かれても、すっげえなーと思うだけでした。自分たちが固まってなかったんで。おれらもこれあるのに、アイツら行ってるやん、やったらわかるんですけど、おれらはまだないから、まずそういう武器を作らな、という気持ちでしたね」 ―最近はピーナツさんがかわいらしいけど憎たらしい女の子を演じて、ドーナツさんが北九州弁でツッコミまくるというスタイルが多いですね。これは少し武器になり始めているのでは? ド「お互いのいい部分が出る形ではあると思うんですよね。ピーナツも日常で憎たらしい部分があるんで。その素の部分が歴を重ねることでうまい具合に出てきたんかなあとは思っています」 ピ「ぼくの中では、かわいらしいのにイカれてるというのが一番おもしろいと思うんですよね」 ―ピーナツさんがかわいらしい感じなのもいいのかもしれないですね。これがブサイクなおっさんだと、リアリティーがなくなるというか(笑い)。 ピ「でも、自分がかわいい系かも、と気づき始めたのはホント最近。北九はイケメンとかよりも、とにかくケンカ強いのが一番なんです」 ド「顔がかわいいということはイコール、ザコいになってしまいますから。むしろ、北九ではジャマ」 ―大阪なら岸和田に近いのかも。 ピ「東京行ったときも駅でしゃべってるだけなのにケンカと間違えられたりとか」 ド「普通にしゃべってるのに口調が強いんでケンカしてるように思われて、ちょっと兄ちゃんたちケンカやめなさいって止められたこともありました」 ―個人的な感想ですがドーナツ・ピーナツさんは誰にも流されず、言葉も自然と出てくる北九弁だし、ピュアな雰囲気が強みかも、と思ってしまいます。 ピ「素直にやってますから(笑い)」 ド「等身大でやってますから(笑い)」 ピ「あと、同級生というのも大きいかも。ずっと高校の延長だから、オシャレな笑いにならない(笑い)。他人コンビですごい世界観を作ったりしているのを見ると、めちゃくちゃカッコいいなと思ったりもするけど、たぶん2人でそんなんやると笑ってしまう」 ド「いや、おまえそんなヤツじゃないやんと言ってしまう。ぼくら作品というか人間でやってる感じなんで」 ◆カウス師匠「漫才を裏切るな」 ―カウス師匠に普段から言われていることはあるんでしょうか? ピ「1つ1つの舞台、目の前のお客さんを大事にすることですね」 ド「あとは漫才を裏切らんこと」 ―裏切らないというのは? ド「舞台でウケてたら劇場の仕事がなくなることはないんです。でも、テレビの仕事とかは波もいろいろあるから、まずは漫才をしっかりやっていれば、そんなに困ることはないという意味だとぼくは思っています」 ―元々カウスさんの漫才は見ていらっしゃったんでしょうか? ピ「子どものころは全く。正月くらいですね。M―1とかしか見てなかった。東京に来て始めて師匠と言われている方々の漫才をルミネで見たんですが、こんなに味があるのか、とびっくりしました。ボケて突っ込んで、みたいなことしか考えていなかったので」 ド「間がすごかったです。間で笑いをとるってこうやるんや、とすごい新鮮でした。ただ言葉でとるだけじゃなくて、あと目線でも笑いとってました。言葉じゃなくても笑いをとれるんや、というのは衝撃でしたね」 ピ「すごいカッコいいなと思いました。上方漫才がすごくシュッとして見えましたね」 ―それが弟子入りされた理由でもある? ピ「そうですね。勉強させてもらいたいと思いましたね。昔の人たちと思っていたのに、すごく新しく感じたんです」 ―もう10年以上のキャリアなので聞くだけヤボですが、大阪に来られたのは良かった? ピ「僕らの性に合ってましたね。大阪の雰囲気も好きやし、小汚さも(笑い)。大阪の街じゃないですよ。大阪の若手の小汚さは北九州で育ったぼくらに合う感じでした。東京NSCの同期は好きやけど、みんなシュッとしてたんで。あと、街に変な人が多い」 ―確かに東京よりは多いかも(笑い)。 ピ「この前もすごい人がいました。2人で喫茶店でネタ合わせしてたんですが、外に出たら歯医者さんの前で看板見ながら歯磨きしてるおじさんがいて」 ド「夜なんで、歯医者はもう閉まってるんです」 ピ「入られんから、自分で虫歯治すしかないと思ったのかなあ」 ド「ずっとシャカシャカシャカシャカって音出してました」 ―(笑い)すっかり大阪の街にもなじんだようですが、現在は11年目。賞レースも少し制限がかかってきますが、中堅に差しかかって何か気持ち的に変わったこととかはあります? ド「ぼくはわかりやすくなったな、という感じですね。何とか結果を出して、テレビも出られるようになって、ちょっと次のフェーズに来たのかなという気にはなっています」 ピ「ぼくは一回漫才でバチンと目立っておきたいです。そしたら劇場にお客さんも呼べるし、ミルクボーイさんとか令和ロマンもそんな感じですから。やはり一度漫才で大きなものを獲りたいです」 ―となるとM―1ということですね(笑い) ピ「そういうことになるのかな(笑い)」 ◆ピュアな2人が見せた野望に高まる期待◆ 【取材を終えて】実は少し誤解をしていた。北九州から東京に出て、さらに大阪へ移住。チャンスを求めてもっとギラギラしているコンビなのかと思っていた。ところが、親友の成功を心から喜び、年齢の近い芸人たちが先に売れても大きく動じることはない。どこかひょうひょうとした軽やかな芸も、そんな2人のキャラクターから来ているのかもしれない。 最近の若い世代ではめっきり減った師匠がいるコンビ。それもいい影響をもたらしているのだろう。超絶レジェンドの言葉はまさに金言。そんな指標があるからこそ迷いも少なかった。その2人が垣間見せたM―1への野望。何やら大きなことを成し遂げそうな予感がしている。(江良 真) ◇初単独ツアー「豆丸」開催…福岡6月23日(よしもと福岡ダイワファンドラップ劇場)、愛知7月15日(大須演芸場)、東京8月17日(よしもと∞ホール)、大阪9月28日(よしもと漫才劇場)。FANYチケットなどで発売