岡田将生、『虎に翼』後半戦のキーマンに? どんな役柄も物にする“性格俳優”としての器
朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)の放送がはじまってから早くも3カ月。「朝ドラ」は半年という長い時間をかけて主人公の人生を描くものだから、本作のヒロイン・寅子(伊藤沙莉)の物語はこれから後半戦へと進んでいくことになる。 【写真】寅子(伊藤沙莉)に微笑む星航一(岡田将生) そこで注目されるのが、新たな登場人物たち。そんな中でも最大級に注目なのは、やはり星航一だろう。演じるのは岡田将生である。これからのキーマンになるであろう存在だ。 この航一という人物は、初代最高裁判所長官である星朋彦(平田満)の息子であり、自らも裁判官だ。番組公式サイトの人物紹介ページには、“温和な性格だが笑顔の奥の本心は誰にも分からない。”とあり、“その信念に寅子と通じ合う部分がある。”とも記されている。まだ劇中における岡田の演技を目にしていないから何とも言えないところだが、なかなか個性的なキャラクターを作り上げてくるのではないだろうか。ご存知の通り『虎に翼』は個性派揃いだから、その誰とも被ることのない、唯一無二の個性を持ったキャラクターを。 これまでに岡田はあらゆるジャンルの作品で主演を張ってきた俳優だが、また同時に、あらゆるタイプのキャラクターを物にしてきた“性格俳優”でもある。 ここ数年で出演した映画作品に絞っていえば、“等身大の若者”はもう演じていない印象すらある。いや、この述べ方だと語弊があるかもしれない。『ドライブ・マイ・カー』(2021年)で演じた性格に難のある若手俳優役も、『ゆとりですがなにか インターナショナル』(2023年)で扮したどこか間の抜けたところのある主人公も、どれも等身大といえば等身大である。ただいずれも“素朴さ”のようなものとは無縁で、それぞれに異なる強い個性を持っている。私たちの中で俳優・岡田将生のイメージは決して固定化されることがない。
『なつぞら』では強烈な個性を持った咲太郎を好演した岡田将生
『虎に翼』の主演である伊藤沙莉とは「マクドナルド」のCMでも共演しており、岡田が披露する“なめらかなダンス”が大きな話題になった。演技者としてのメンタルだけでなく、フィジカル面においても高い柔軟性を持っているのだと驚かされたものだ。岡田は絶えず私たちを鮮やかに裏切ってみせる。 思い返せば岡田は、初めての朝ドラ出演作品となった『なつぞら』(2019年度前期)でも、強烈な個性を持ったキャラクターを演じていた。彼が演じた奥原咲太郎は情熱的で自由奔放、破天荒な存在であり、ほかの登場人物たちはもちろん、全国のお茶の間をにぎわせた(ザワつかせた……)ものである。ポジションとしてはヒロイン・なつ(広瀬すず)の兄なのだが、これがなかなかの問題児だったのだ。とはいえ、すべては大切な妹のため。感情が先走り過ぎては空回りしてしまうさまを、岡田は力演によって体現していた。岡田自身の演技への真っ直ぐさも相まって、咲太郎はどうにも憎めない魅力的なキャラクターとなっていたのが印象に残っている。しかし今回の星航一は、感情的な咲太郎とは真逆の性格の持ち主のようである。 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 虎に翼 Part1』(NHK出版)にて岡田は、「朝ドラは『なつぞら』以来ですが、撮影期間が長く、その分演じる役をより深く見せることができると思っています。僕は後半から参加させていただきますが、皆さんが紡いだものをしっかりと受け取り、さらに新しい風を吹き込めるように頑張りたいと思います。早くトラコさんに会いたいです」と語っている。 これを読むかぎり、たしかに“後半から”ではあるが、“長い撮影期間で演じる役をより深く見せる”のが本作における岡田のポジションなのだと分かる。つまりはやはり、これからのキーマンになるであろう存在なのだ。寅子と航一の“通じ合う部分”とは何なのだろうか。 2024年は主演映画『ゴールド・ボーイ』でサイコな殺人鬼を演じ、主演ドラマ『1122 いいふうふ』(Prime Video)の配信開始に続き、本作『虎に翼』への出演、『錦糸町パラダイス~渋谷から一本~』(テレビ東京系)の放送もはじまり、さらには大作映画『ラストマイル』が公開となる。“主演俳優”の器の持ち主にして、唯一無二の“性格俳優”でもある岡田に、まだまだ驚かされることになりそうだ。
折田侑駿