【高校野球】水戸一VS日立一の県立名門進学校対決は水戸一に軍配 142キロエースを温存した理由
◆春季茨城県大会▽2回戦 水戸一4―1日立一=延長10回タイブレーク(23日・ノーブルホームスタジアム水戸) 文武両道を貫く、県立名門進学校同士のマッチアップは投手戦の末、延長10回タイブレークに突入し、水戸一が4-1で初戦突破した。最速142キロを誇る3年生エース右腕・小川永惺(ひさと)を温存し、米川惟希から古宮寛之の2年生右腕リレーで1失点に抑え、日立一に競り勝った。 * * * 耐えた。粘った。延長10回表、タイブレークで3点の援護を得たその裏。背番号11の古宮は最後の打者を左飛に打ち取ると、強く拳を握った。3回からロングリリーフで8イニングを投げ、4安打無失点と快投。流れをたぐり寄せる86球だった。 「1、2回戦を小川さんなしで勝てなかったら、夏の甲子園はないと思う。真っすぐのコントロールが特によかったと思います」 先発した背番号17の右腕・米川が初回に3安打を浴び、1失点。2回は3者凡退に封じたが、木村優介監督は「日立一の上位打線が合っているイメージだった」と3回から2番手への継投を決断。早期の出番に古宮は「準備も100%ではなかったんですが、自分が行くしかない」と腹をくくり、マウンドへ走った。 ストレートは自己最速を2キロ更新する134キロを計測。ツーシームは左打者のタイミングを外すことに有効で、フライアウトに封じていった。尻上がりに調子を上げ、三振は2つも、打たせて取った。 同じ轍は踏まない。3月10日の仙台一との練習試合では延長10回タイブレークで投げ、5-6でサヨナラ負けした。ともに今春センバツ21世紀枠校の最終候補に挙がりながらも、落選した進学校同士の勝負だった。「2点勝っていたのに、3点取られてしまって…それを思い出して投げました」。負けっ放しじゃいられない。強い気持ちで打者に対峙した。経験を糧に確かな成長を実感できた。 将来の夢は「映画を作ること」。ジブリ作品に魅せられ、スクリーンを愛する。「高校生になって映画を見に行く機会が増えたんですが、『自分ならこの作品はもっと面白くできるな、改善点があるな』って思っちゃうんです」。同校は「仁義なき戦い」などの名作を残したアクション映画の巨匠・深作欣二監督が学んだことでも知られる。クリエイティブな未来を夢見つつ、白球に青春を捧げている。 木村監督は6回1死満塁の好機で「代打・小川」を起用し、その後は一時、一塁の守備に就かせながらも、マウンドに立たせることなくベンチに下げた。「秋が終わって『小川だけでは勝ち上がれない、限界がある』と本人やチームで話しました。この春は他の投手陣の育成を課題に挙げて、ずっと練習試合でもやってきた。きょうの1勝は本当に大きい」とナインをたたえた。「今後も小川さんを温存できるように、しっかりとした投球をして、勝っていきたい」と古宮。一球入魂の精神で、突き進む。(加藤 弘士)
報知新聞社