〝農政の憲法〟改正法成立 四半世紀ぶり転換 食料安保、基本理念に
食料安全保障の確保を基本理念とする改正食料・農業・農村基本法が29日、成立した。1999年の制定から四半世紀を経て初めての改正となる。「農政の憲法」とされる基本法が改正され、日本農業は大きな転換点を迎える。政府・与党は今後、改正法に沿った具体的な施策の検討を本格化する。 【ポイントを図で見る】改正基本法の概要 同日の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決、成立した。改正をリードしてきた自民党の森山裕総務会長は、成立後の農林合同会議で「今からがスタートだ」と述べ、施策具体化や予算充実が重要との考えを強調した。 改正法は、食料自給率目標に加え、食料安保に関する目標を新たに設定し、達成状況を少なくとも年1回調査、結果を公表すると規定する。食料の価格形成では「持続的な供給に要する合理的な費用」の考慮を求める。 気候変動を踏まえて、農業の環境負荷低減を新たな理念に掲げる。生産性や付加価値の向上による農業の持続的な発展や、地域社会の維持に向けた農村振興も理念として打ち出す。 改正案の審議では、食料の価格形成が焦点に浮上した。政府は、価格転嫁と収入保険などで対応すると説明。野党は直接支払いの充実も必要だと主張した。議論は平行線をたどり、日本維新の会を除く野党は改正案に反対した。本会議で立憲民主党の羽田次郎氏は「再生産可能な価格が実現するかは不明」だと訴えた。 改正法の成立を受けて政府は近く、岸田文雄首相を本部長とする食料安定供給・農林水産業基盤強化本部を開催。来春の次期食料・農業・農村基本計画の策定に向けて、施策の具体化を進める。
日本農業新聞