銀行株買い増しに慎重論、日銀政策修正織り込み-金利との相関下がる
(ブルームバーグ): 日本銀行のマイナス金利政策が早ければ今月にも解除される可能性がある中、本来なら事業環境の好転期待が高まるはずの銀行株をさらに買い上げることに投資家が慎重になっている。政策修正を織り込んだ買いで、金利上昇による業績改善が既に株価に反映されてきたためだ。
野村アセットマネジメントの宮崎義弘チーフ・ポートフォリオマネジャーは、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループなどの持ち高を利益確定売りで減らしてきた。銀行株の「オーバーウエート」は維持しているが、日銀が2022年12月に政策修正に踏み出す前から銀行株に投資してきた同氏は「今の水準からウエートを増やすことはしない」と考えている。
JPモルガン・アセット・マネジメントの坂井美智子ポートフォリオ・マネジャーは、ゼロ金利までの利上げは市場である程度織り込まれてきたと話す。銀行株は収益性などの観点から「持ちたい企業群ではある」とした上で、金融セクターではコーポレートガバナンス(企業統治)の改善期待などが高い保険会社をより多く保有していると明かした。
日銀が22年12月にイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を修正して以来、金利上昇の追い風を受けた銀行株は日本株上昇を主導するセクターの一つになってきた。修正翌日以降のTOPIX銀行業指数の上昇率は68%と、東証株価指数(TOPIX)の39%高や日経平均株価の46%高を上回る。
だが、足元で銀行株の長期金利への感応度は低下。1に近づくほど似た値動きであることを示す相関係数(20日間)はマイナス0.25と、負の相関であるマイナスに下がった。金利上昇が銀行株買いにつながっていないことを意味する。
物価の高止まりや企業の力強い賃上げ機運を受けて3月のマイナス金利解除の見方が急速に増える中、日経平均は史上最高値からの調整を強いられている。金利上昇局面では相対的な割高感が高まる株式に売り圧力がかかりやすい。支えとなってきた銀行株に勢いが戻らなければ、日本株相場は金利上昇により脆弱(ぜいじゃく)になり得る。