「母ちゃん美味いぜ! 俺の身長を伸ばしたのはこの弁当だ!」アンガールズ田中の人生最高の食事で、バラエティで最下位になった母の弁当とは
ちょっと不運なほうが生活は楽しい #1
自身の名を冠したバラエティ番組でMCを務めるなど、今やお笑い芸人としての地位を確かなものにしているアンガールズ・田中。テレビではキモカワ芸人として暴れているが、ラジオでのトークやエッセイで紡がれる言葉は、どこまでも謙虚な姿勢と、他人に対しての優しさに溢れている。「ベスト・エッセイ2022」にも選出された、母親がつくってくれたお弁当について書かれた文章、「最高の食事」を特別に無料で公開する。 【写真】アンガールズの田中さん
身長188センチ体重58キロ
食事というものは、毎日のことで何気なく過ぎて行く。けれど、毎日の積み重ねだからこそ、色んな想いが詰まっていて、時にその感情が意外な形で僕の前に飛び出してくることがある。 僕は一人暮らし歴がもう26年になり、年齢が45歳なので、一人で暮らしてきた時間のほうが長い。 ここまで来ると、一人でご飯を食べるということに全く寂しさを感じない。 よく芸人同士、仕事が終わると今日の収録の話や、他愛もない話をするために、みんなでご飯に行くことがあるけれど、それが大好きな芸人もいれば、正直それがなくてもいい芸人がいる。僕はどちらかといえば後者に近いと思う。 さっと家に帰ったら帰ったで、一人で好きなテレビを見たりゲームをしたり、そんなことをするだけで十分楽しいからだ。 ただ、自分の中でテンションが上がる食事というのはある。たとえば焼肉や寿司、それから牛丼! お笑い芸人を始めた頃、お金がなくて節約していたために、月に一度だけ贅沢として、牛丼屋さんの牛丼を食べてもいい日を作っていた。 普段は食パン半分とか、袋入りのラーメン(出前一丁やサッポロ一番みそラーメン)を半分に折って、スープの素も半分だけ使って、一袋で2食分にして食べていたりしたから、その、月一度の牛丼の日に食べる牛丼がたまらなく美味しかった。たぶんそのせいで、今も牛丼を異常に食べたくなる日があるのだと思う。 そんな生活をしていたから、188センチの身長で58キロまで体重が落ちた。 若い頃の自分の写真を見ると、頬がめちゃくちゃ凹んでいて、太ももがめちゃくちゃ細くて、脚が上から下までずっと同じ太さで、ロボット兵みたいだった。 あの頃にだけは戻りたくない。