岡村靖幸「ものすごいセクシーで、すごい歌詞」と語る松任谷由実の楽曲、コラボ制作曲とは?
松任谷由実がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Yuming Chord」(毎週金曜11:00~11:30)。11月24日、12月1日(金)の放送は、「RHYMESTER&岡村靖幸 cheers 松任谷由実~“ユーミン”先輩と乾杯‼~」と題して、2週にわたり宇多丸さん、Mummy-Dさん、DJ JINさんからなるヒップホップ・グループRHYMESTERと岡村靖幸さんをゲストに迎えてお送りしました。12月20日(水)リリースのアルバム『ユーミン乾杯!!~松任谷由実50周年記念コラボベストアルバム』に参加した2組が、ユーミンとアルバムの制作秘話を語り、ここでしか聴けない貴重なトークを繰り広げます。 この記事では、12月1日放送の模様を紹介。ここでは、岡村さんがコラボ曲「影になって」でこだわったポイントを語ってくれました。
◆職人芸のように楽曲を再構築
ユーミン:「影になって」とコラボしてくれたのが岡村ちゃん!(当初は)違う曲に着手してくれていたのですが、この曲のほうが、岡村ちゃんがガーッとやってくれるんじゃないか、という方向転換になりました。 岡村:そういうことがありましたね。ちょっと真面目な話になりますけど、“宝”のようなトラックがあり、それを触らせてもらうというところから始まるわけですよ。僕が使ったものは、まだ打ち込みの時代ではないマルチをもらって、一つひとつ整えていくんです。生ドラムは生ドラムで整えていって、ベースはベースで整えて。 Mummy-D:(音が)ずれちゃうもんね。 岡村:そこに、現代的なものを加味する。だから、まったく変わるのではなく、元の素材……たとえば古着を1回切って、もう1回新しい服を作る(ような作業ですね)。「あの時代のあの服だよ。だけどもう、ちゃんと縫える人もいないから」みたいな感じの最高の“生地”を触らせてもらって、新たな服を作らせてもらっているような感じの企画だと思っていました。だからもう、職人のような。 ユーミン:岡村ちゃんの作業は、タペストリーのようね。 岡村:そうですね。綴れ織り(つづれおり)のような、「職人の職人だ」みたいなことをやって(出来上がった曲を)送ったら、「もっと弾けてほしい」と。 宇多丸:本当に再構築するような、「もっとぶっ壊してしまっていいよ!」みたいな。 ユーミン:「バキッといけ!」みたいな(笑)。 岡村:「はい!」って言って、もう1回(笑)。僕は、この「影になって」という曲がもともと好きなんです。グルービーだし。 ユーミン:仕上がりを聴いて、体に入ってくれている気がしました。 岡村:ブラック(ミュージック)のような感じもあるし、アーバンな感じもある。あと、偶然にもありがたかったのは、今はシティポップブームで、(楽曲には)シティポップな部分もあるし。モダンに作ったつもりです。 宇多丸:完全に再解釈というかね。 岡村:ただ、この曲自体が持っている、本当に大事なことは一切いじっていないです。コードとか。 Mummy-D:一番大事なところはね。 ユーミン:一番大事なところにエキサイター(※エフェクターの一種。音色や音量を変えずに、ある特定の音を強調する装置の総称)をかけてくれた。寂寥感(せきりょうかん)とか疾走感とかが、もっとすごくなっている。 岡村:もともとこの曲は、ものすごいセクシーで、“孤独がセクシー”というすごい詞なんですよ。「踊るように歩こう」とか「ワードローブちらかし」とか、田舎の少年からすると、「田舎にはないぞ」とか思ったり(笑)。 宇多丸:タンスはあっても、ワードローブはない(笑)。 岡村:「踊るように歩こう」って、この主人公は最初に電話して、つながらなくて切ないわけなんだけど、心を切り替えて、ワードローブを脱ぎちらかして踊るように歩く。そこがもう……。僕があの(寂寥感のある)アレンジをしたのだとしたら、ユーミンさんがそれを引き出したんですよ。あの曲は、もともとそういうものを持っているんです。 ユーミン:岡村ちゃんが、寂寥感のかたまりじゃないの。 宇多丸:孤独を抱えながら踊るように歩いている人……それは岡村靖幸だ、と。 岡村:まあね。 ーーここで、岡村靖幸 cheers 松任谷由実「影になって」をオンエア。 ユーミン:超カッコいいわ~! 宇多丸:いろいろ語りどころがある。この、バーチャルデュオみたいな曲ってたまにあるけど、このバランスって……。今、聴きながらMummy-Dも言ってたけど……。 Mummy-D:そう、1本なんだよね。 宇多丸:最後、渾然一体になるというか。 Mummy-D:ユニゾンじゃないんだよね。 宇多丸:いやあ、これは“岡村ラボ”だよね。 ユーミン:見事です。 宇多丸:岡村ラボで生まれた、ユーミンと岡村さんの融合体が最後に誕生して未来へ、みたいな。 ユーミン:このアルバムは、『ユーミン乾杯!!』以外の何ものでもないですよ。こうして、後輩と呼ぶのはおこがましいが、私の楽曲とリスペクトをもって向き合ってくれて、本当に、ユーミン先輩は感謝でいっぱいです! * 松任谷由実50周年のファイナルを飾るコラボベストアルバム『ユーミン乾杯!!~松任谷由実50周年記念コラボベストアルバム~』は12月20日に発売です。本作では、桑田佳祐&松任谷由実名義の「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」の収録が決定。 1986年放送の音楽番組「メリー・クリスマス・ショー」の書き下ろし楽曲を、世界観はそのままに大胆なアイデアでリメイク。デュエット歌唱を新たに収録します。 (TOKYO FM「Yuming Chord」2023年12月1日(金)放送より)