【デーブ大久保コラム】メジャーもあきらめないほうが勝つ。あらためてそれに気が付きましたね
【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】 今年のワールド・シリーズは全部見ました。某テレビ局の情報番組でのコメントもありますので、すべての試合をチェックしました。面白いシリーズになりました。まあ、個人的にはあのヤンキースとドジャースが43年ぶりに戦うというだけで興奮していましたね。 今回のシリーズを見て感じたことは、われわれが学んできた野球の原点をあらためて感じたのです。巨人のV9時代に、ドジャースのキャンプに参加したときに、川上(川上哲治)監督の下、牧野(牧野茂)ヘッドコーチが「ドジャースの戦法」を学んできました。それを駆使して勝ち続けたわけです。 この戦法が今では日本野球の根源にもなっているわけです。そうスモール・ベースボールってやつですね。現在のメジャーでは大まかな打撃に頼った戦法の中に、さまざまなデータを生かした戦法が取られています。なので昔ながらの「ドジャース戦法」などは消えた部分もあるのかと思っていました。 しかし、ドジャースの根底には、その野球が残っていました。デーブ的にそう感じたんです。選手一人ひとりが次の塁を果敢に狙っていく。第5戦で逆転した8回表の攻撃もそうでしたよね。ラックスが犠飛を打ちましたが、二塁走者のエドマンが果敢に三塁へ進塁し、ベッツの犠飛で逆転。二塁にいたスミスがまたも三塁へ進んでいます。次から次へと進塁を試みる。相手守備からしたら嫌で仕方ないはずです。 それと同時にデーブ・ロバーツ監督が平気で送りバントをやらせたりもして、それを選手たちがしっかり遂行していく。そういう粘りがあるからこそ、強力打線がより強力になり、終盤の逆転劇が起こりやすくなるんです。シーズン中も終盤に逆転する試合が多かったのですが、そういう部分も大いに関係があると思いますね。 多分ドジャースの選手たちは、誰も負けている試合でも最後まであきらめていないんだと思います。どんなにすごい技術やパワーを持っていても、試合途中であきらめてしまうと、気持ちがキレて素晴らしいパフォーマンスができないんです。 私の中でも、勝つための最高の作戦は何かと言われれば「最後まであきらめない作戦」と断言できます。それくらい気持ちというのは大事なことなのです。 一方、ヤンキースはその気持ちの強さが少しだけドジャースよりも劣っていたのかな、と思いますね。でも世界最高峰のあの舞台でプレーするプレッシャーはとんでもないものだと思いますね。しかも両チームとも勝つことが義務付けられていますから。そして何よりファンの圧力が……。 その中で好投した山本由伸は本当に素晴らしかったですし、大谷翔平もケガをしながらも出続けたあの気持ちの強さは、半端なくすごいなと尊敬してしまいました。 野球をしている人なら、あの舞台でプレーしてみたいなあ、と思ってしまう、元プロの私でさえそう思う素晴らしい雰囲気のワールド・シリーズでした。
週刊ベースボール