米軍・横須賀基地でPFAS汚染の原因となる泡消火剤の漏出が多発していたことが内部文書で判明!水質検査の結果は非公表に
なにより問題なのは、報告書は、2022年8月以降の濃度上昇の原因、排水処理施設の汚泥の含有PFOS濃度、過去の泡消火剤の使用実績や廃棄の実態などについて触れておらず、肝心の漏出原因も「特定できなかった」としていることだ、と呉東弁護士は指摘する。 「記録を読むと、関係した当事者に聞き取りをしているにすぎず、科学的な調査や検証をまったくやっていないことがわかりました。それなのに『原因はわからなかった』と結論づけて、事態を収束させようとしているのです」
除去用のフィルターを外し、水質調査の結果も非公表に
問題は解決したどころか、事実上、放置されている。 米軍が排水施設に取りつけた活性炭フィルターをひそかに取り外していたことが、昨年秋にわかった。その理由について、米軍が防衛省に伝えたという説明は次のようなものだった。 「PFOS等の値は安定しているという現状を踏まえ、粒状活性炭フィルターの稼働を停止した」 そのうえ、米軍はそれまで横須賀市に報告していた水質調査結果も公表しなくなった。排水の濃度が国の指針値を超えていないかどうかについては、こう答えたという。 「粒状活性炭フィルターを稼働させるような特異な事象は確認されていない」 横須賀市長が求めた水質検査の結果はいまも、提供されていない。米軍の対応はある時期を境に後ろ向きになった、と呉東弁護士は感じている。 「それは、事案が横須賀基地から在日米軍司令部に移り、日米合同委員会で協議されるようになってからです」
今年6月、呉東弁護士は、社民党党首の福島みずほ参院議員や外務省北米局日米地位協定室の職員らとともに在日米軍司令部を訪れている。 このとき面会したアビゲイル・カタリーノ陸軍大佐は会談の冒頭、録音を禁じた。一方で、事前に渡していた要請書には目を通していないようだった。会談の途中、環境問題を扱う「コマンドエンジニア」のトップは本音をのぞかせた。 「地元自治体や市民の懸念はそのとおりだが、日米間の合意を超えて(水質検査結果を)公表すると、他の基地でも対応しなくてはいけなくなるので公表できない」 呉東弁護士は言う。 「会談から4カ月後に報告書は公開されたものの、勧告欄や施設欄が全面的に黒塗りにされ、かえって疑念を膨らませるものでしかなかった。ほしいのは、何が起きたのかを裏づける調査についての情報と汚染防止策です」 すでに、第2次となる5項目にわたる情報開示を求めているという。 筆者:諸永裕司(もろなが・ゆうじ) スローニュースで『諸永裕司のPFASウオッチ』を毎週連載中。(https://slownews.com/m/mf238c15a2f9e) ご意見・情報提供はこちらまで pfas.moro2022@gmail.com
諸永裕司