ECBは6月利下げを示唆:世界的な本格的な利下げ局面の幕開け
ECBは次回6月の理事会での利下げを示唆
欧州中央銀行(ECB)は11日に開かれた理事会で、予想通りに政策金利を維持した。政策金利の据え置きは、昨年9月以降継続している。他方、理事会は、声明文に利下げを示唆する文言を新たに加えた。ECBは、6月6日の次回理事会で、利下げを実施する可能性が高まっている。 ECBは声明で、「インフレ見通し、基調的インフレの動き、金融政策の伝達の強さに関する理事会の最新の評価が、インフレが持続的に目標に収れんしているとの確信をさらに強めるものであれば、現在の金融政策の制約レベルを下げることが適切になる」とした。 ラガルド総裁は前回3月の理事会後の記者会見で、「利下げの議論はしなかった」と説明していた。しかしその後、ECBのメンバーから利下げに前向きな発言が相次いだ。タカ派とされるドイツ連邦銀行(中央銀行)のナーゲル総裁、オーストリア中銀のホルツマン総裁、オランダ中銀のクノット総裁さえも、6月の利下げを容認するような発言をした。これを受けて、金融市場では6月の利下げ観測が強まっていた。 他方、3月雇用統計、3月CPIが予想以上に上振れ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退する中、それがECBの利下げ判断に与える影響が注目されていた。 しかし実際には、ECBは既定路線通りに6月の利下げを示唆した。ラガルド総裁は記者会見で、米経済の動向が政策決定に関連しているとの認識を示しつつも、ユーロ圏の状況は異なるとも強調した。そのうえで、「ECBはFRBに依存しているのではなく、データに依存している」と語っている。
ユーロ圏の経済の弱さ、インフレ率の低下が米国に先行する利下げを後押し
FRBの利下げが遅れるなか、ECBの利下げがFRBに先行する、さらに利下げのペースがFRBを上回れば、ユーロがドルに対して下落する可能性が高まるだろう。実際、足もとでユーロの対ドルレートは下振れ、昨年11月以来の安値水準に近づいている。 ただし、ユーロ圏の経済は弱含んでいる一方、インフレ率は着実に低下してきていることから、ユーロ圏は通貨安の経済的メリットを享受しやすい環境にある。この点が、米国とは足並みを揃えず、ECBが先行利下げに向かっている背景にあるだろう。 ラガルド総裁はユーロ圏の経済情勢について、「第1四半期の経済は依然として弱い。サービスへの支出は堅調だが、製造業は需要の低迷に直面している」「経済成長に対するリスクは引き続き下振れ傾向にある。金融政策の効果が予想以上に強まれば、成長率は低下する可能性がある」と語った。 他方、物価動向については、「基調的なインフレ指標の大半は2月にさらに低下し、物価上昇圧力が徐々に弱まっているという状況を裏付けた」「インフレは、今後数か月間は現在の水準付近で推移し、来年には目標水準まで低下すると予想される」と語っている。ユーロ圏では、消費者物価指数の上昇率は、前年同月比で同+10.6%を記録した2022年10月をピークに、今年3月には速報値で同+2.4%にまで鈍化している。