審判は石コロ?石コロじゃない? プロ野球交流戦で勝敗を左右する珍事
横浜DeNAとソフトバンクの交流戦(2日、横浜スタジアム)で勝敗を左右する珍しいプレーがあった。ソフトバンクが2-3の1点ビハインドで迎えた7回二死満塁。フルカウントとなって柳田の打球は、ダイヤモンドの内側の二塁の左斜め前あたりにポジショニングをしていた渡田・塁審に当たってからセンターへと抜けていった。同点のランナーとなる三塁走者に続き、二塁から逆転ランナーも生還したが、審判が2点目を認めなかったため、工藤監督は「アンパイヤ!」とルールブックを持ち出してまで猛抗議をした。 審判は「石コロ」が、野球界の常識のように思われていた。1982年10月28日の西武対中日の日本シリーズで、平野の打球が、塁審に当たって、はなかえって、三塁走者がアウトになったが、試合後に、その村田塁審が「審判は石コロ」と発言したことで、審判は石コロと思い込んでいた関係者が多かったが、実は、審判は、ある条件下では「石コロ」ではないのだ。 野球規則の5・09には「内野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で走者または審判員に触れた場合、あるいは内野手(投手を除く)を通過していないフェアボールが、審判員に触れた場合は、ボールデッドとなり、走者は一個の進塁が許されるか、または帰塁する。その間に走者はアウトにされることはない」とされている。つまり、投手が触っていない、内野手の前の打球に関しては、審判に当たった時点で、審判員のインターフェアランス(妨害)をとってボールデッドとなるため、二塁走者の帰還は認められなかったのである。極めて珍しいケースだ。 渡田塁審が場内マイクをつかって「内野に位置しているアンパイヤに当たりましたので、ボールデットとし押し出し状態として三塁走者の得点だけとし打者は一塁です。満塁でゲームを再開します」と説明すると、難解なルールが理解できない場内からざわめきがおきた。審判に当たっていなくとも、センターへ抜けていたタイムリーだっただけに、横浜DeNAファンにすれば「助かった!」の思いだったのだろう。 審判が「石ころ」としてインプレーのまま続行されるのは、投手、内野が触れたあとの打球、もしくは内野を通過した打球と、ファウルゾーンで当たった場合。2013年8月11日の広島対巨人戦で、3回二死一塁で、菊池の打った打球が一塁手のロペスの横を抜けたが、審判に当たってストップ。その打球を拾った二塁手が一塁に送球してアウトになった。この場合は、内野手のロペスを通過した打球なので、審判は「石コロ」扱いとして、インプレーのままプレーが続けられたが、今回のケースは違ったのである。 結局、大原からスイッチした長田から、4番の内川が押し出し四球を選び逆転に成功。8回にも犠飛で1点を追加したのだが、その裏、バリオスが元ソフトバンクの井手のタイムリーと、自らの暴投で同点に追いつかれ、荒波に勝ち越しタイムリーを打たれて一気に逆転を許してしまう。結果的に“審判が石コロでなかった騒動”の1点が響いてしまった。あの回、審判がうまく打球をよけて、2点タイムリーとなっていれば、試合の流れは、もっと変わっていたのかもしれない。 「いやあ、ソフトバンク相手に、逆転された後は、強いなと感じていた。しかし、あきらめないで最後までくらいついていった。8回は、今年のうちを象徴する攻撃だった。素晴らしいね。あきらめないことを教わった。凄いゲームですね」と逆転勝利した中畑監督は高笑いだったが、工藤監督にすれば、泣くに泣けぬ1敗になった。