高良健吾インタビュー 説明過多でもなく共感を求めているのでもないが、映画の作り方のスケールの大きさを感じる『罪と悪』
―― 面白いですね。私は以前ご一緒した『蛇にピアス』(2008)の時の井浦新さんと高良さん、吉高由里子さんの舞台挨拶を凄く覚えています 僕も凄く覚えています。この前、ご飯を食べる機会があって3人で話をしたんです。その時、『蛇にピアス』の舞台挨拶時の写真を皆で見ながらあの時の事を掘り下げたんですけど、僕と新さんが地面に座っていて、誰ひとりとして笑ってなかったんです。 ―― 井浦さんから初日舞台挨拶では会場毎に質問内容を毎回変えて欲しいと言われて、「皆で色々と経験をしよう」という意図に感じました。 確かに、それはあったかも。新さんもまだ俳優という仕事を本腰でやっていない時だったと思います。だから当時は、どちらかと言えば元気なやんちゃなお兄ちゃんという感じでしたね。今はお父さんみたいな感じですが。 ―― 今は高良さんの背中を見ている後輩たちも居ます。今後“どんな俳優になっていきたい”というものはありますか。 自分がしてもらって嬉しかったことは、後輩たちに全部しています。自分がしてもらって為になったり、自分が貰って嬉しかった言葉だったりを自分の中で消化して自分の言葉に変えて伝えています。僕も先輩たちから大切な何かを貰っている感じなので、伝えることでその人にとって大切な何かになっていったらいいなと。先輩から貰ったものを後輩に繋いでいるという意識はあります。 僕自身は、かっこいい先輩に育ててもらいました。きっと、先輩たちももっと上の先輩から教えてもらい、受け継がれて来た言葉や接し方、現場の居方などだと思うので次の世代に伝えています。 ―― 具体的な言葉とか、覚えてたら教えてもらえますか。 誰に言われたかは覚えていないのですが、今、パッと思い浮かんだのは「スタンドイン(撮影前に、配光、立ち位置を確認するといった照明や撮影の準備作業の為に、俳優の代理をする人物のこと)はなるべく自分でした方がいい」です。 スタンドインって、だいたい助監督さんやスタッフの人達がやってくれるんですけど、僕は自分でやると決めています。もちろん休憩などで出来ない時もありますが、なるべく自分でスタンドインからやると決めています。理由は一番良い光を当ててもらえて、一番良い所にカメラが入るわけじゃないですか、そして僕らはカメラの前に立つ。撮る人達も段どり前や本番の時だけ自分が出て行くよりも、最初から居た方が皆良いと思うんです。自分の為にもなるし、自分の一番良い所で撮影してもらえる。案外黙って現場でそれをやっていると不思議と皆そうなっていくんです。別に何かを言う訳でもありませんが、自分が立っていた方が良く映るんですよね。 どんなジャンルの映画にも縁とタイミングを大事に。確かに硬派な映画に出演していたイメージもあったものの、近年はエンターテインメント大作にも楽しんで出演している高良健吾さん。人との繋がりや出逢いから得たことを身体に染み込ませ、歳を重ねているんだと感じたインタビューでした。本作の『罪と悪』どの俳優も光るショットがある、これも助監督時代を経験した齊藤監督だからこその脚本だと確信します。
取材・文 / 伊藤さとり