米大統領選の行方に、金融市場が神経をとがらせている。米国で24日閉幕した20カ国・地域（G20）財務相・中央銀行総裁会議でも、為替の急変動が議題に上った。円相場は日本時間の23日夜に1ドル＝153円台と3カ月ぶりの安値をつけるなど安定性を欠いており、日本の当局も警戒を強めている。 「大統領選については、みなさん不確実性が高いということは気にされていた」。日銀の植田和男総裁は会議終了後の記者会見でこう明かした。 米国経済を巡っては、雇用の指標が上向くなど、楽観論が広がりつつある。ただ、選挙の結末によっては、世界経済全体が混乱しかねない。 特に共和党候補のトランプ前大統領が勝利した場合、財政をふかす政策が取られて米国の財政赤字が拡大しやすくなる。インフレ懸念が強まり、米連邦準備制度理事会（FRB）は利下げに動きづらくなる。 足元で円安が進行しているのは、これを見越した投資家が円を売って金利水準の高いドルを買っているためだ。 日本にとっては、日銀が7月に利上げに踏み切って以降、一度は沈静化した円安がぶり返したとも言え、悩ましい状況だ。過度な円安が長引けば、輸入物価の上昇が再び家計を圧迫することになりかねない。日銀は市場などから利上げを催促されやすくなる。 円安が物価に与える影響について、植田氏は米経済の動向や米大統領選などを踏まえて「丹念に見極めていく」と説明。追加利上げを判断するための「時間的余裕はある」と話した。（米沢文）