仮説と検証を使いこなせるチームはここが変わる 部下の自主性を引き出す「連携」の取り方とは
考えて決断する仕事(青ワーク)では、「仮説の構築」がいちばんの目的となり、赤ワークでは、「仮説の検証」がいちばんの目的となる。 ハリケーンの影響で2015年に沈没した貨物船エルファロを例に見てみよう(こちらの記事も参照)。 船内の赤ワークが実験的なアプローチで行われていたら、沈没という結末はどう変わりえただろうか。 もしエルファロが、正しく仮説を立てていたら ハリケーンが近づく中で出港したエルファロには、大きな選択肢があった。
ハリケーンの直撃を受ける可能性がある直進ルートをとるか、それとも、より安全な迂回路となるオールドバハマルートを選ぶかだ。 通常ならこれは大して考えることではない。直進ルートのほうが距離が短く、早く効率的に進むことができるからだ。検討の余地はない。 だが今回は、直進ルートをハリケーンが脅かしていた。よって、船長は、次のような仮説を構築できたのではないだろうか。 直進ルートをとるつもりだ。ただしこの決断は、嵐がきているが、そのせいでスピードが落ちたり航行に悪影響が生じたりすることはなく、船を脅かすほど強力な嵐にはならないという仮説にもとづいている。
これはあくまでも仮説なので、今後赤ワークをしていく(作業をこなしていく)なかで、波の大きさ、風速、縦揺れの度合いなど、仮説の裏づけあるいは反証となる情報を、全員が集めてほしい。 それらの情報をもとに、ラムケイの分岐点であらためてルートを判断したい。 ■仮説を立てることで生じる違いとは もちろん、次の決断ポイントを設けるだけでは仮説とは呼べない。 1、合理的な理由(嵐はそれほど強くならないという予想)にもとづいて、
2、決断を下して(直進ルートをとると決めて)ラムケイという終点を決め、 3、結果(波の大きさや船体が受ける影響の度合いなど、嵐の強度の尺度となるもの)を評価する方法を定める。 ここまでやって仮説だ。このような仮説を立てたことで、エルファロの船員の思考は改善に向かい、学習と成長を求めるようになる。 つまり、効率よく目的地に早く着ける直進ルートを進むという業務をただこなすのではなく、そのルートが適切かどうかも考えるようになるのだ。
そして、のちの決断を左右する、風、海、気圧の変化にもっと目を光らせるようにもなるだろう。 終点の設定により、船員は自分の目に入るものになおいっそう注意を払うようになり、自分が見たことや思っていることを積極的に周囲と共有したいと思うようになる。 その結果、ルートを変える必要性に関係する情報が適宜集まるようになり、ひいては、正しい決断へと至る道が開ける。 連携すると、前に進むことに対する責任感が生まれるのだ。
L デビッド マルケ :米海軍攻撃型原子力潜水艦「サンタフェ」元艦長