斜面地の国有地を市民農園に 長崎の団体が整備、九州初の取り組み 「空き地を資源に」
斜面地の空き地を市民農園として活用する長崎市の市民団体「長崎都市・景観研究所」の平山広孝所長は5日、市内であった会合で、今月から国有地の管理委託制度を活用して農園整備に取り組むことを報告した。福岡財務支局によると、市民団体が同制度を使って市民農園を整備するのは九州で初めて。 場所は同市中新町の民家跡約160平方メートル。所有者が相続税として土地を物納したが、道路に接していないため建築基準法の要件を満たしておらず、建物を建てることができない。長崎財務事務所が「利用困難財産」の管理・活用策を探る中、1日に同団体と2年間の管理委託契約を結んだ。団体側は無償で利用でき、同事務所も草刈りなどの管理コストを削減できる。 同団体は2020年から同町内で「坂」と「農園」を組み合わせた「さかのうえん」プロジェクトに取り組んでおり、5カ所目。来年春の利用開始を目指す。事例報告した平山所長は「斜面地だから得られるものを見つけ出すことで空き地が資源として見直され、暮らしも豊かになる」と意義を強調した。 会合は、同支局主催の斜面地に所在する国公有財産に関する意見交換会。22年度から管内の長崎、佐世保、北九州3市の担当者と開いており、今回は管理コストの削減や有効活用をテーマに、3市の担当者ら計約30人が参加した。 空き家をリノベーション(改修)して子育て世代に賃貸し、10年後に贈与する事業に取り組む長崎市の不動産会社「明生興産」の尾上雅彦社長も事例報告。参加者は現地にも足を運んだ。6日にグループ討議をし、意見を交わす。 同支局管財総括第一課の阿部一博課長は「さかのうえんや明生興産のような取り組みが広がると、税金による管理コストの低減に加え、地域の活性化にもつながる」と期待を寄せた。