7番でロフト28~29度の“飛び系アイアン”。HS40m/sのアベレージゴルファーの味方になる?【クラブ選びをクール解説!】
「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけてきたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はストロングロフトアイアンの功罪について教えてもらった。
そもそもアイアンとはなんぞや、から考えたい
み:最近のアイアンの売れ筋は7番で28~29度のストロングロフトモデル。7番で26度の超ストロングロフトも人気があるそうです。 宮城:飛び系アイアンに飛びつく前に、そもそもアイアンとはなんぞや。そこから考えてほしいです。最近のアイアンは6番からの5本セットが増えていますが昔は8本セットが当たり前。なぜアイアンは本数が多いのか。 み:距離の階段を作るためですか。 宮城:その通りです。しかし、距離を刻むためにはトータルでなくキャリーがどれだけ出るか把握することが大事です。仮に7番で190ヤード飛んだとしてもキャリーが165ヤードしか出ないとか。7番でスピン量が3000回転台というモデルもあります。 み:アマチュアのドライバー並みのスピン量ですね。 宮城:25ヤードも転がったら、たとえグリーンに着弾してもボールがグリーン上に残りませんよね。 み:飛び系アイアンは低重心設計で球が上がりやすいなどと謳っています。高さで球が止まるのでは? 宮城:球が上がるから止まるということはなく、止めるためにはある程度のスピンが必要です。ロフトが最初から立っているアイアンは、それ以上ロフトを立てられられないので、ふだんダウンブローでちゃんと打てる人でもスピンを増やせません。ラフだとさらに顕著で、女子プロでもラフからのショットはほとんど奥にこぼれてしまいます。それに売り物の飛距離にしても必ずしも飛ぶとは限りません。 み:飛び系なのに? どういうことでしょう。 宮城:ロボットが打てばロフトを立てただけ飛ぶでしょう。でも人間が打つとスピンが少なすぎて失速してしまいます。先日、対談させていただいた松尾好員さんもおっしゃっていましたが、弾道計測機のアルゴリズムは、スピンが少ないほど飛ぶアルゴリズムになっているので試打室では飛んだ気になるかもしれません。 み:コースに行くと思ったほど飛んでいないという経験はよくあります。球の落ちる場所によってはランがまったく出なかったりします。 宮城:低重心アイアンはロフトを立てるとよけいにスピンが減ります。ある程度当てる技術さえあれば、パワーのないアマチュアでもスピンの入りやすいマッスルバックのほうが有利といえるし、ちゃんとダウンブローで打てている人であればロフトで飛距離は変わることはそんなにありません。
みんなのゴルフダイジェスト編集部